天使のラプソティ~声になる~
俺はふっと緊張が解けた。

未央に微笑みかける。


「・・・前にも言ったよな。俺はお前の歌声が好きなんだよ」

未央がびっくりして目を見開いた。


「公園で歌ってたの聞いたときすげー感動した。だから、もう一回歌って欲しくてさ」

そこで俺は黙って、未央の顔を見つめた。


沈黙が俺らを包む。




未央と俺の視線が絡み合った。


途端、未央は顔を赤くさせてうつむいた。
再びノートに顔を向け、ペンを握った。

未央はときどき考え込むようにペンを止め、ゆっくり時間をかけて書いてる。

俺は黙って待ってた。


『私が歌を歌うようになったのは、カウンセラーの先生に勧められたからです。
声を出すリハビリのためです。結局「喋る」ことはできませんでしたが・・・・。
私が歌ってたのは先生に勧められた発声用の曲です。

歌声が好きって言ってもらえるのは、少し恥ずかしいけど嬉しいです。
でもあらたまって人前で歌うのは恥ずかしいです・・・・・。

それから、飯島さんの気持ちはすごく嬉しいです。ありがとう』



細いきれいな字。

未央と同じように柔らかい雰囲気の字だった。




未央の気持ちをちゃんと知れたのは初めてだ。

今までは俺の一方通行だと思ってた。


でもしっかり未央に届いてたんだ。


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