天使のラプソティ~声になる~
ミルクの退院
三日後、猫の退院する日が来た。
未央達は土曜日の昼くらいに迎えに行くらしい。
俺もここまで来たんだから、あいつの面倒は最後まで見たいと思って病院に行くことにした。
黒いジャンパーを羽織って自転車を走らせる。
冷たい秋の風が吹いた。
二ヶ月後には本格的な寒い風がやってくる。
そうしたら、あの公園で未央に会うこともなくなるな。
猫が退院したら病院にも行かなくなる。
未央と会う口実が無くなってしまう。
アキラの言う通り、あんまりゆっくりしてる時間は
・・・・・・・無いのかもな。
病院は、平日よりお客さんの数が多かった。
小さなチワワが飼い主に抱き上げられて大人しくしていた。
キャリーケージに入れられたうさぎはじっとどこかを見つめてる。
病院に来るくらいだから、元気なやつはほとんどいなかった。
「奏也さん、こっちこっち」
待合室の机に未央と中条が座ってた。
手を振って俺を呼んでる。
「わーっ!奏也さん私服かっこいー!!」
中条が手を叩いて言った。
俺はリアクションに困って照れ笑いを浮かべる。
そう言えば、私服で会うのは初めてだ。
中条は大きめのパーカーにショーパンのさっぱりした格好だった。黄色いパーカーが派手で中条らしい。
俺はさり気なく未央に視線を移した。
私服の未央はいつもと少し雰囲気が違った。
白いふんわりとしたワンピースにジャンパーを羽織ってる。
大人しくて清楚な感じが、未央にぴったりでよく似合っていた。
私服の未央も、すごく可愛い。