天使のラプソティ~声になる~
放課後、俺は友達の誘いも断って緑丘公園に行った。

無意識に足取りが速くなる。



あのこはいるだろうか。
期待と不安が混ざり合って、心臓がどきどきしてる。何だか落ち着かない。

こんな気持ち久しぶりだ。


それだけあのこの歌は印象が強かった。
ただ一回聞いただけで、俺をこんなに惹きつけるんだから。


おそるおそる公園に入りベンチを探した。




でも、あのこの姿はどこにもなかった。

「・・・・・・はぁー・・・」

思わず溜息をついた。

いねぇのか。なんだ。

歌が聞けないことに、がっかりしている俺がいる。


あのこがいたとしても歌が聞けるとは限らない。
わかってるけど。

もしいたなら、俺はどうしてただろう。


歌って欲しいなんて頼み込んでるかもな。
すっげー危ねぇ変な人。

普段ならそんなこと絶対しない。

けど、今回はするかもしれない。
あの歌は俺にとって特別。もう一度聞けるなら、どんなことでもする。





昨日あのこがいたベンチに座ってみた。街の景色がよく見える。

都会と田舎が入り混じった街。

夕日に照らされ、中途半端な高さのビルが光っていた。

街が夕焼け色に染められていく。




あのこはここから、この景色を見て歌ってたんだな。

どんなことを思って歌ってたんだろう。

この景色はどんな風に見えたんだろう。




俺はじっと景色を見つめ、あのこの歌を口ずさんだ。
歌詞はわかんないから適当。
メロディーを思い出して歌った。

全部覚えてるわけじゃないけど、だいたい頭に残ってる。

頭の中であのこのソプラノを響かせてた。








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