天使のラプソティ~声になる~
「え・・・・」
俺はびっくりして診察台に手をついた。
「ほお」
先生も驚いた声を出した。
事情のわからない二人は、俺らの顔をきょろきょろ見てる。
「ここにきて初めて鳴いたよ。このこ」
「え?」
中条が不思議そうに先生を見た。
「事故のショックだったのか、この子はずっと鳴かなかったんだよ。人間だってよっぽど怖い思いをしたら声が出なくなる」
俺はぱっと未央が思い浮かんだ。
「でも良かったね。ちゃんと鳴けるみたいだ」
「ミルク、この二週間全然鳴かなかったの?」
中条はミルクの鼻の頭を指先でつついた。ミルクが嫌そうに顔を背ける。
ふにゃあ、とちゃんと不満の声も出した。
未央とミルクが重なって見えた。
いつか未央も、人の優しい手に包まれて、声を出せる日が来るのかもしれない。