天使のラプソティ~声になる~


「他行くか!」
ゲーセン内を歩いてると、突然未央が足を止めた。
どこかをじっと見つめてる。

「未央?」

振り返って、未央の視線の先を追った。



そこにあったのは、UFOキャッチャー。


ふわふわのふさぎのぬいぐるみが入ってた。


「欲しい?」

未央ははっとして両手を振った。

何か、遠慮してるように見える。



「じゃ、俺がやりたいからやろーっと」


わざとらしく言ってゲームの前に行く。

呆然としてる未央を手招きしてそばに呼んだ。

「どれがいいと思う?」

未央はじっくりと中を見回して、おそるおそる奥のほうにあるぬいぐるみを指差した。

俺はコインを入れてクレーンを奥へ動かす。

「一発で取ってやるから見てろよ」


俺はぎりぎりのラインを定めてクレーンを動かした。

ここだ、と思うところでボタンを押す。


クレーンがうさぎの耳の部分を引っかけた。

ぶら下がったぬいぐるみは不安定に揺れながら移動してきて、穴のところで上手く落ちた。


未央のが驚いた顔をしてる。


俺は受取口からぬいぐるみを取り出した。


「やるよ」

未央は「え?」と言いたそうな顔をしてた。


「俺は取るまでが面白いだけだから。ぬいぐるみとか飾らねーし。もらって」

未央が遠慮がちに手をのばしてそれを受け取る。



手に取ると




すごく嬉しそうにそれをぎゅっとした。




その笑顔が


すごく俺の心を穏やかにする。



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