天使のラプソティ~声になる~
「はーぁっ・・・・へったくそ」
歌い終わって、自分に突っ込んで笑った。
帰ろう。
立ち上がろうとしたところで、後ろから
じゃり
と音がした。
ばっと振り向いた。
すると、そこには
きのうの女の子が立っていた。
俺が振り返ったら慌てて後ろを向く。
「あっ・・・・」
走って逃げようとしたので、俺はとっさに腕を掴んだ。
「待って!」
思わず引き止めてしまった。
「お前、昨日ここで歌ってたこだよな?桜凛?ちょっと名前教えてくんない?俺は東高の飯島奏也っつーんだけど・・・・・」
興奮して、早口でいっきに喋った。
はっとして黙ると、女の子は怯えていた。
やべぇ、こんなことするつもりじゃねぇのに・・・・。
「あー・・・悪ィ・・・。ちょっと急ぎすぎた」
俺が腕を放すと、女の子は少しほっとしたようで表情を柔らかくした。
「俺、東高の二年の飯島奏也っつーんだけど・・・・」
改めて自己紹介した。
女の子がおずおずとうなずく。
「えーっと・・・・お前・・・名前は」
女の子は考えこむように視線をさ迷わせ
困った顔をした。
はっとしたように鞄を開けて何かを取り出す。
何だ・・・・?
震える手で俺に取り出したものを差し出す。
生徒手帳だった。
『桜凛女学院 1年A組
天羽 未央』
「みお・・・・?」
女の子はうなずいた。
不安そうに上目遣いで俺を見つめる。
「でさ、お前昨日ここで歌ってたよな?」
未央は気まずそうにして、小さくうなずいた。