天使のラプソティ~声になる~


「はーぁっ・・・・へったくそ」

歌い終わって、自分に突っ込んで笑った。

帰ろう。

立ち上がろうとしたところで、後ろから

じゃり

と音がした。



ばっと振り向いた。


すると、そこには


きのうの女の子が立っていた。


俺が振り返ったら慌てて後ろを向く。
「あっ・・・・」

走って逃げようとしたので、俺はとっさに腕を掴んだ。


「待って!」



思わず引き止めてしまった。


「お前、昨日ここで歌ってたこだよな?桜凛?ちょっと名前教えてくんない?俺は東高の飯島奏也っつーんだけど・・・・・」
興奮して、早口でいっきに喋った。

はっとして黙ると、女の子は怯えていた。



やべぇ、こんなことするつもりじゃねぇのに・・・・。


「あー・・・悪ィ・・・。ちょっと急ぎすぎた」


俺が腕を放すと、女の子は少しほっとしたようで表情を柔らかくした。


「俺、東高の二年の飯島奏也っつーんだけど・・・・」

改めて自己紹介した。
女の子がおずおずとうなずく。

「えーっと・・・・お前・・・名前は」

女の子は考えこむように視線をさ迷わせ
困った顔をした。


はっとしたように鞄を開けて何かを取り出す。



何だ・・・・?



震える手で俺に取り出したものを差し出す。

生徒手帳だった。


『桜凛女学院 1年A組
天羽 未央』


「みお・・・・?」

女の子はうなずいた。
不安そうに上目遣いで俺を見つめる。


「でさ、お前昨日ここで歌ってたよな?」

未央は気まずそうにして、小さくうなずいた。


< 5 / 150 >

この作品をシェア

pagetop