普通に輝くOL
郁香と彰登はそれぞれ別々に外へ出ると、清登の働くコンビニへと向かった。


清登はちょっとびっくりした感じだったが、残り10分ほどで仕事が終わるということで、郁香はコンビニ内で雑誌を立ち読みしてコーヒーを飲んで時間を待つことにした。


「彰登さん、ありがとうございました。
お仕事ご苦労さまです、がんばってくださいね。」



「ああ、そだ、明日の朝は、僕と出勤しよう。
ニセモノに我がもの顔されて歩かれるのは気分が悪いからな。
そっちに朝メシ食いにいくから伝えておいて。」



「ええ、待ってます。じゃ本物さんと。ウフフ・・・」



「じゃあな。」



そんなやりとりを清登がきいていたのか、


「俺は、明日も直にいと行く方がいいと思う。」


「えっ!どうして?
直登さんは社長だし、次は車でって言ってたし・・・そんな重役みたいなのはちょっと・・・。」



「俺さ、郁香が我が家に住む前のやりとりを知ってるんだ。」


「やりとりって?兄弟で何か話したの?」


「うん、郁香のおじいさんは結局、本社部分を直にいに任せただけであとはすべて郁香さんに相続したんでしょう?

それを直にい以外の兄弟は気に入らないって不服を言いまくってたんだ。


俺も徹朗じいさんが僕たちには何も残してくれなかったのは、最初ケチ!って思ったりもした。
けど・・・俺たちの原点である俺たちの親は徹朗じいさんとこで働かせてもらってただけなんだし、社員が会社で働くのは当たり前って、直にいが言ったんだ。

広にいなんかは直にいは経営権があるからそんなこと言えるんだとか勝手なこと言ってたけど、俺もバイトとかしてさ、社員が働かせてもらってもらうのは給料だからさ・・・。

土地とか事務所とかもらうものじゃないって納得したんだ。」



「そう・・・直登さんが・・・。」


「それにね、直にいにきいたけど、本社は直にいが正式に社長になる前って臨時代表のやつ?副社長みたいなのかな・・・そいつが借金作ってたり、部下に横領する輩までいたとかで経営がよくなかったらしいんだ。

直にいはそれを承知で本社を引き継いだんだよ。
自分の力を試してみたいって。

それとね・・・直にいが徹朗じいちゃんに孫が見つかったって報告したんだ。」



「どういうこと?」



「徹朗じいちゃんは死んだ息子さんにあとを任せたかったから、昼寝してるときにうわ言で言ったり、飲んだ後でせめて孫でもいれば・・・なんてこぼしたらしくて、そこから直にいは調査してみるかって探偵を使って調査したんだ。

そしたら・・・その孫が会社に・・・それも本社にいるってわかってさ。

直にいはすっごいうれしそうにじいちゃんに報告したそうだ。

郁香のことけっこう見てたはずだよ。どんな女の子かわかってたから邸に呼んだんだと俺は思うんだ。」


「そうだったの・・・。なんか歓迎されてないなって感じたのはそのとおりだったのね。」


「だけどもう大丈夫だって。
相続するお金なんかもらわなくっても郁香がきてくれて、俺もうれしいよ。

直にいも言ってたけど、家の中が明るくなったよ。」


「ありがとう、清登くん。お腹すいたね。」


「藤子さんが用意してくれてると思うよ。
藤子さんも郁香が来るってきいて、お菓子を作ってくれるようになったのはうれしいよ。」



「清登くんって大学生なのにお菓子って・・・かわいい趣味。」


「い、いいだろ。好物は人それぞれなんだから。」


「そだね。うん。私もお菓子は大好物だよ。」
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