普通に輝くOL
結局押し切られる形で、郁香は花司家へと移動した。
次男の花司広登は結婚して独自に家庭を築いているので、花司家には長男の直登と3男の彰登4男の優登そして5男の清登が過ごしている。
そして、ほとんど家からは出ている生活が多い長女の小夜はたまにもどってくるらしい。
身の回りのことや掃除、食事の手配などは家政婦の谷田藤子がサポートしていて、谷田はもともと楢崎徹朗の邸で家政婦をやっていたとのことだった。
「君の荷物は明日中に部屋に持ってこさせるようにするから、月曜日には僕と出社することにしようか。」
「あ、あの・・・つかぬことをお聞きしますが・・・」
「はい?」
「直登さんは会社では社長なんですか?それとも重役クラス?」
「直球で質問してきたね。じゃ、僕も直球で返さなきゃね。・・・社長です。いちおうね。
ずっと君のおじいさんがやってきた会社を、拾ってもらったも同然の僕が継いだなんていうのはおこがましいんだけど、傍でずっと仕事をさせてもらってきて、副社長という地位で長くやってきた。
でも、社長になるのは君のお父さんだと思っていたんだ。」
「父はどうしているかわかっているのですか?」
「ああ。すでに5年ほど前にこの世を去っておられたよ。
君と君のお母さんを捨てて、女性と暮らして事業を起こされたらしいけど、失敗して負債を抱えて女性にも逃げられて、自殺だったそうだ。」
「そうですか・・・。」
「ショックでしたか?」
「いいえ。それが自分の親のことにも思えないようで、ずっと私・・・ひとりでやってきましたから、家族そのものがもうわからなくなっているのかもしれないです。」
「では、なおさらこの家で過ごしてほしいと思う。
男主体で、全員毎日そろうこともないのだろうけど、ひとりでいるよりかは誰かと話もできるし、部屋も明るいと思う。
えっと・・・僕と出社するのが嫌かな?
どうしても嫌なら、弟とでもいいよ。
ただし、電車通勤はだめだ。」
「どうしてですか?電車の方が渋滞も気にならないし、便利だし・・・ずっとそうしてきましたけど。」
「それは、チカンに遭ったりしても困るし、僕たちの家族として住んでいると社内外のよからぬことを考える輩がマスコミにあることないことを流したりもするからね。
通勤時にひとりにならない方がいい。
兄弟の誰も君と出れないときには、僕の秘書に寄ってもらうようにするし。」
「秘書って・・・碓井さんでしたっけ?」
「よく知ってるね。僕のことはぜんぜん知らなかったのに?」
「すみません!碓井さんとは以前、宣伝用のキャラクターの著作権の手続きでお世話になったことがありましたので。」
「ふう~ん。君はかなり会社に貢献してくれてる人だったんだね。
碓井はそういうことは何にも報告してくれなかったなぁ。」
「手続きについての説明をしてくださっただけですし、私のような下々の者には重役さんたちとは接点もありませんし、私は普通のOLで毎日を過ごしたいんです!」
「普通のOLねぇ・・・。僕は君が望むなら碓井の下あたりで秘書としてがんばってくれたらって思ってたんだけどね。」
「碓井さんの下なんて・・・遠慮します。
頭がついていきませんって。」
「あははは。碓井は嫌われたものだな。
まぁ、明日も休日だし、君の荷物を片づけながら話をしよう。
部屋が落ち着いたら、2人で何か食べに出かけようか。」
「おうちで食べないんですか?」
「明日はね、みんな用事があるみたいでさ。
僕と出かけるのは嫌かな・・・?」
「いいですよ。・・・どうしてそんなに嫌か?ってきくんですか?」
「クセになってるのかな。
会社だとずっと仕事だし、ランチも仕事と兼ねることが多いし。
ふと気づくと、いっしょに食べてくれる人がいなくて。
碓井はいつのまにか食事を済ませているようだし、社員は寄り付きもしないな。」
「女性は誘ってほしい人がいっぱいおられるんじゃないんですか?」
「べつに・・・。ヘタに誘ったりすれば、どこまで貢がされるかわかったもんじゃないし、ご機嫌取りをしなかったら怒り出したりする女性は苦手だよ。」
「大変なんですね~~~。私はホイホイ社員食堂で特売メニューを食べられて幸せな気がしてきました。
そういえば・・・優登さんってちょくちょく私といっしょになりますよ。」
「ぬぁにぃーーーーー!あいつ、僕が誘ったらいつも仕事が忙しくて・・・とか言って付き合いが悪いと思ったら、君と社員食堂にいたのか。
あっ、そうだ・・・じゃ、僕も食堂に行こうかな。」
「そ、それは困ります。あとでみんなに何て言われるか・・・。私うまく説明できないですもん。」
次男の花司広登は結婚して独自に家庭を築いているので、花司家には長男の直登と3男の彰登4男の優登そして5男の清登が過ごしている。
そして、ほとんど家からは出ている生活が多い長女の小夜はたまにもどってくるらしい。
身の回りのことや掃除、食事の手配などは家政婦の谷田藤子がサポートしていて、谷田はもともと楢崎徹朗の邸で家政婦をやっていたとのことだった。
「君の荷物は明日中に部屋に持ってこさせるようにするから、月曜日には僕と出社することにしようか。」
「あ、あの・・・つかぬことをお聞きしますが・・・」
「はい?」
「直登さんは会社では社長なんですか?それとも重役クラス?」
「直球で質問してきたね。じゃ、僕も直球で返さなきゃね。・・・社長です。いちおうね。
ずっと君のおじいさんがやってきた会社を、拾ってもらったも同然の僕が継いだなんていうのはおこがましいんだけど、傍でずっと仕事をさせてもらってきて、副社長という地位で長くやってきた。
でも、社長になるのは君のお父さんだと思っていたんだ。」
「父はどうしているかわかっているのですか?」
「ああ。すでに5年ほど前にこの世を去っておられたよ。
君と君のお母さんを捨てて、女性と暮らして事業を起こされたらしいけど、失敗して負債を抱えて女性にも逃げられて、自殺だったそうだ。」
「そうですか・・・。」
「ショックでしたか?」
「いいえ。それが自分の親のことにも思えないようで、ずっと私・・・ひとりでやってきましたから、家族そのものがもうわからなくなっているのかもしれないです。」
「では、なおさらこの家で過ごしてほしいと思う。
男主体で、全員毎日そろうこともないのだろうけど、ひとりでいるよりかは誰かと話もできるし、部屋も明るいと思う。
えっと・・・僕と出社するのが嫌かな?
どうしても嫌なら、弟とでもいいよ。
ただし、電車通勤はだめだ。」
「どうしてですか?電車の方が渋滞も気にならないし、便利だし・・・ずっとそうしてきましたけど。」
「それは、チカンに遭ったりしても困るし、僕たちの家族として住んでいると社内外のよからぬことを考える輩がマスコミにあることないことを流したりもするからね。
通勤時にひとりにならない方がいい。
兄弟の誰も君と出れないときには、僕の秘書に寄ってもらうようにするし。」
「秘書って・・・碓井さんでしたっけ?」
「よく知ってるね。僕のことはぜんぜん知らなかったのに?」
「すみません!碓井さんとは以前、宣伝用のキャラクターの著作権の手続きでお世話になったことがありましたので。」
「ふう~ん。君はかなり会社に貢献してくれてる人だったんだね。
碓井はそういうことは何にも報告してくれなかったなぁ。」
「手続きについての説明をしてくださっただけですし、私のような下々の者には重役さんたちとは接点もありませんし、私は普通のOLで毎日を過ごしたいんです!」
「普通のOLねぇ・・・。僕は君が望むなら碓井の下あたりで秘書としてがんばってくれたらって思ってたんだけどね。」
「碓井さんの下なんて・・・遠慮します。
頭がついていきませんって。」
「あははは。碓井は嫌われたものだな。
まぁ、明日も休日だし、君の荷物を片づけながら話をしよう。
部屋が落ち着いたら、2人で何か食べに出かけようか。」
「おうちで食べないんですか?」
「明日はね、みんな用事があるみたいでさ。
僕と出かけるのは嫌かな・・・?」
「いいですよ。・・・どうしてそんなに嫌か?ってきくんですか?」
「クセになってるのかな。
会社だとずっと仕事だし、ランチも仕事と兼ねることが多いし。
ふと気づくと、いっしょに食べてくれる人がいなくて。
碓井はいつのまにか食事を済ませているようだし、社員は寄り付きもしないな。」
「女性は誘ってほしい人がいっぱいおられるんじゃないんですか?」
「べつに・・・。ヘタに誘ったりすれば、どこまで貢がされるかわかったもんじゃないし、ご機嫌取りをしなかったら怒り出したりする女性は苦手だよ。」
「大変なんですね~~~。私はホイホイ社員食堂で特売メニューを食べられて幸せな気がしてきました。
そういえば・・・優登さんってちょくちょく私といっしょになりますよ。」
「ぬぁにぃーーーーー!あいつ、僕が誘ったらいつも仕事が忙しくて・・・とか言って付き合いが悪いと思ったら、君と社員食堂にいたのか。
あっ、そうだ・・・じゃ、僕も食堂に行こうかな。」
「そ、それは困ります。あとでみんなに何て言われるか・・・。私うまく説明できないですもん。」