普通に輝くOL
玄関先で言い合った後、花司兄弟はリビングへ移動した。
直登は郁香に先にお風呂をすませるように伝え、リビングで兄弟4人で話の続きをすることになった。
「じゃ、今度は僕がおまえたちに質問するけど、各自郁香についてどう思っているか聞かせてほしい。」
「どう思ってるかって、どういうこと?
好きか嫌いかとか?」
「それもだけど・・・。彼女は楢崎の家の人間だから。」
「結婚したいかとか結婚を前提に付き合いたいかどうかってことだろ?
俺、結婚するつもりだから。」
「えっぇええええええーーーーーーーー!!!!」
さらっと直登の質問の返事を最初にしたのは優登だったこともあって、他のみんなは驚いていた。
「な、なんで、おまえが僕が意見を言う前に、そんな返事をしてんだよ!ああ?
僕は郁香の部屋へ直行するつもりで、今夜はここへ来たんだ。」
「どうしても彰登がここで泊まるなら、空いてる部屋まだあるんだからそっちで寝ろよ。
郁香の部屋には誰も入れさせないからなっ!」
「優登がいきなり立候補しちゃったなら、俺もするよ。」
「清登はまだ学生だろ!収入もないやつが黙ってろ。」
「収入で愛が決まるわけじゃないだろ。
俺だって郁香と居たい!」
「居たいなら俺に加勢しろ、結婚したら郁香はおまえの姉としていてくれる!」
「ねえちゃんだなんてやだ!」
「何勝手に話をすすめてるんだ!、郁香は僕と結婚したら当然2人だけの新居に引っ越して、そこで僕の子たちの面倒をみるに決まってるだろ!」
「ドラマは夢かテレビで見てろよ!」
「何ぃーーー!」
「みんな黙れっ!!!!つまりは全員が郁香を恋愛対象に思ってるってことなんだろうが!」
「直にい・・・」
「よぉ~くわかった。僕が彼女に住んでもらうときにあれこれゴネてた理由は、そういう下心が明るみに出るのがはずかしかったんだろ!
ったく・・・うちの独身男どもはみんな飢えたオオカミだと思われるな。」
「そういう直にいはどうなんだよ!ストーカーだろ。」
「違う!僕は当分、結婚なんてしたくない。女性アレルギーはまだ治らないんだ。
郁香は小夜と同じように、うちのマスコット妹キャラでいいじゃないか。」
(妹キャラ・・・ですって・・・。何をみんなしゃべっているの?)
「ねぇ、みんな何を話しているの?」
「あ・・・いや、その・・・この家の役割分担っていうかね。」
「そそ。彰にいが入れば、当番もずれるしさ。」
「彰登さんが正式に、ここに住んでくれることになったのね。
で、妹キャラってなあに?」
「あ゛ーーーーー!芝居する必要なんかないだろ。
郁香、俺と結婚を前提に付き合ってくれ。
俺となら、気兼ねすることなく何でも話せるだろ。」
「優登・・・!なんで・・・そんなこと?」
「俺は君が好きだ。入社以来、ずっといいなって思ってみてきた。
それで、いっしょに住むようになったし、直にいがどう思ってるのかってさっきみんなにきいたから、俺は正直に話したんだ。
彰登も惚れてるみたいだけど、俺はもっと真剣だ。」
「ま、待て、優登!抜け駆けしやがって、先に言えばいいってもんじゃないだろ!
フェアーじゃない。」
「そうだよ、みんな郁香が好きなんだから、抜け駆けはだめだよ。」
「じゃ、直にいを抜いてだな・・・。」
「ねぇ、私の意見も何も聞かないで、勝手に何を言ってるの?
直にいもどうして、こんなこと言わせてるの?
私はまだ誰とも結婚なんてするつもりはありません!
まだ、仕事だってかじりかけなのに、みんな・・・知らないっ!ばかっ」
郁香はカンカンに怒って、自室へ飛び込んで出て来なかった。
「わちゃぁ~~~郁香、マジ怒った。こえぇぇぇーーー。」
「優登、おまえがとんでもないフライングするからだぞ。」
「俺は話をつくろったり、嘘をつくのはいずれバレるから嫌なんだ。
素直な気持ちを言っただけだ。」
「僕たちの前だけならいいが、今のはあまりにも郁香の気持ちを考えない行為だと思えないか?」
「俺は、直にいみたいに家のためとか政略結婚させられるのは絶対嫌だからな。
好きなヤツが目の前にいるのに、ひとのご機嫌とったりできるか!」
「言いたいことはわかるが早急過ぎたんだ。
少なくとも・・・彼女はこれから僕たちを避けるようになるだろう。
飢えたオオカミだと宣言したんだからな・・・。
彼女にその気がないなら余計にだ。近づけば完全に犯罪者だろうな。」
「直にい・・・俺。・・・だけど俺は・・・勇気出したのに。」
「そうか。優登はすごいな・・・そこまで勇気をふりしぼったんだ。
うん、結果はどうであれ、おまえが誠意をみせたことだけは僕が伝えるよ。」