普通に輝くOL
その日、直登は3件の訪問客の予定があったがすべて日程を変更してもらい、すぐにテニスコートのある楢崎家の別荘へと出かけた。
別荘は他にまだ売却していない物件が1つあったが、そこはすでに更地にして駐車場として収益をあげ、郁香に収入が入るように直登が手続きしたのだった。
(そういえば、別荘の管理人を学生時代の友達に頼んだと言っていたな。
もし、ときどき連絡をとりあっている相手であれば、別荘も住めるようになっているんじゃないか・・・。)
別荘に近づくと、表玄関はきれいに掃除してあって、表札部分には「直郁すずらん荘」と書いてあった。
(まさか・・・この名前って・・・)
門柱の前で直登が立っていると、管理人らしき人物が声をかけてきた。
「こんにちは。もしやあなたは・・・花司直登様でいらっしゃいますか?」
「どうして僕のことを?」
「やっぱりそうでしたか。ふみちゃんのことで来られたんでしょう?」
「君が、同級生だったという郁香のお友達?」
「はい、村白芽衣子と申します。
私は甲状腺の病気で体が弱く、普通に就職できなくて、しかも両親が事故でなくなってしまい、途方にくれているところをふみちゃんに助けてもらったんです。
あ、ふみちゃんは今、弟と出かけています。
もしよかったら、お部屋でくつろいでお待ちいただけますか?」
「あの、どのくらいの時間かかりますか?
それと失礼ですが、弟さんと郁香は何をしに行ったのですか?」
「あ、キノコ採りです。この山はキノコが豊富ですから。
あと20分くらいで帰ってくるんじゃないかしら。
それまで、お部屋でお茶でも飲んでいてくださいな。」
「じゃ、遠慮なく、待たせてもらいます。」
お茶を飲んで、直登は窓を開けて周りの景色を眺めた。
見える範囲だがテニスコートもきれいに整備されている。
以前、直登が見たときは、ネットも破れ、コートのラインもほとんど消えているほど荒れていた。
別荘内の部屋も、こじんまりしたホテル並みに古いが由緒ある部分は残し、その他の部分は最新技術でリフォームされている。
(驚いたなぁ。郁香は広報で学んだ知識でもって、ここを改造していたとは。
僕に何も相談してくれなかったのはさびしいが・・・今回のようなことが起こることも想定していたのかもしれない。)
景色をながめていると、歩道にそって若い男女が手をつないでこちらへ向かって来るのが見えた。
空いた方の腕には2人とも手提げ袋に、キノコをいっぱい持っている。
「なっ・・・郁香。そして・・・男ぉ!!」
「ただいまぁ。めいちゃん、わりと早かったでしょ。
弥刀(みと)ったらキノコバッグさげて幼稚園ごっこしたいとか言うのよ。
もう、都会だったら大騒ぎになるわよね~~。」
「ここは山なんだからいいだろ。昔はよくこうやって帰ったじゃないか。
て・・・あれ、お客さん?」
「えっ、お客様!?・・・あっ・・・どうして、もう見つかったの。」
玄関まで走って郁香を迎いに出た、直登は郁香とつないだ弥刀の手を振り払い、郁香の手を引っ張って自分の通された部屋まで引っ張って行った。
「直にい・・・いきなり何なの?
私は、しばらく帰らないから・・・」
「いきなりなのは君の方だ!
退職ではなかったものの、みんなに心配かけてるだろ。
清登と藤子さんにだけ教えたようだが、どうして僕にここにいると伝えない?
僕に言わないと、会社のたくさんの君につながった人たちが迷惑を被るだろう。」
「それは悪いと思ってるけど・・・だけど・・・直にいにも会いたくなかった。」
「そ・・・そうなのか。泣かせたからか?
お気に入りの兄ちゃんには教えてもらいたかったのに。」
「もうお気に入りじゃないわ。」
「どうすればまた気に入ってもらえる?」
「帰って・・・。しばらく休んだら荷物をまとめにいきます。
それから、会社もやめようと・・・」
「だめだ。それは許さない。」
「どうして?もう私はがむしゃらに働かなくても生きられるようになったんだから・・・楢司で働かなくてもべつの就職先をさがして田舎でのんびり過ごします。」
「就職先を変えるのはかまわないが、とにかく君の家に帰らなきゃだめだ。」
「嫌です!毎日、告白ばかりされるようなところへは・・・帰れないわ。
私はその気がないんですから、怖いじゃないですか!」
「怖いのか。僕が弟たちを黙らせたら納得してくれないか?」
「嫌です。黙っても・・・何をされるかと思うと。
小夜さんがずっといてくれるわけじゃないし、ほとんどいないし。」
「僕と話がしたいんじゃなかったのかい?」
別荘は他にまだ売却していない物件が1つあったが、そこはすでに更地にして駐車場として収益をあげ、郁香に収入が入るように直登が手続きしたのだった。
(そういえば、別荘の管理人を学生時代の友達に頼んだと言っていたな。
もし、ときどき連絡をとりあっている相手であれば、別荘も住めるようになっているんじゃないか・・・。)
別荘に近づくと、表玄関はきれいに掃除してあって、表札部分には「直郁すずらん荘」と書いてあった。
(まさか・・・この名前って・・・)
門柱の前で直登が立っていると、管理人らしき人物が声をかけてきた。
「こんにちは。もしやあなたは・・・花司直登様でいらっしゃいますか?」
「どうして僕のことを?」
「やっぱりそうでしたか。ふみちゃんのことで来られたんでしょう?」
「君が、同級生だったという郁香のお友達?」
「はい、村白芽衣子と申します。
私は甲状腺の病気で体が弱く、普通に就職できなくて、しかも両親が事故でなくなってしまい、途方にくれているところをふみちゃんに助けてもらったんです。
あ、ふみちゃんは今、弟と出かけています。
もしよかったら、お部屋でくつろいでお待ちいただけますか?」
「あの、どのくらいの時間かかりますか?
それと失礼ですが、弟さんと郁香は何をしに行ったのですか?」
「あ、キノコ採りです。この山はキノコが豊富ですから。
あと20分くらいで帰ってくるんじゃないかしら。
それまで、お部屋でお茶でも飲んでいてくださいな。」
「じゃ、遠慮なく、待たせてもらいます。」
お茶を飲んで、直登は窓を開けて周りの景色を眺めた。
見える範囲だがテニスコートもきれいに整備されている。
以前、直登が見たときは、ネットも破れ、コートのラインもほとんど消えているほど荒れていた。
別荘内の部屋も、こじんまりしたホテル並みに古いが由緒ある部分は残し、その他の部分は最新技術でリフォームされている。
(驚いたなぁ。郁香は広報で学んだ知識でもって、ここを改造していたとは。
僕に何も相談してくれなかったのはさびしいが・・・今回のようなことが起こることも想定していたのかもしれない。)
景色をながめていると、歩道にそって若い男女が手をつないでこちらへ向かって来るのが見えた。
空いた方の腕には2人とも手提げ袋に、キノコをいっぱい持っている。
「なっ・・・郁香。そして・・・男ぉ!!」
「ただいまぁ。めいちゃん、わりと早かったでしょ。
弥刀(みと)ったらキノコバッグさげて幼稚園ごっこしたいとか言うのよ。
もう、都会だったら大騒ぎになるわよね~~。」
「ここは山なんだからいいだろ。昔はよくこうやって帰ったじゃないか。
て・・・あれ、お客さん?」
「えっ、お客様!?・・・あっ・・・どうして、もう見つかったの。」
玄関まで走って郁香を迎いに出た、直登は郁香とつないだ弥刀の手を振り払い、郁香の手を引っ張って自分の通された部屋まで引っ張って行った。
「直にい・・・いきなり何なの?
私は、しばらく帰らないから・・・」
「いきなりなのは君の方だ!
退職ではなかったものの、みんなに心配かけてるだろ。
清登と藤子さんにだけ教えたようだが、どうして僕にここにいると伝えない?
僕に言わないと、会社のたくさんの君につながった人たちが迷惑を被るだろう。」
「それは悪いと思ってるけど・・・だけど・・・直にいにも会いたくなかった。」
「そ・・・そうなのか。泣かせたからか?
お気に入りの兄ちゃんには教えてもらいたかったのに。」
「もうお気に入りじゃないわ。」
「どうすればまた気に入ってもらえる?」
「帰って・・・。しばらく休んだら荷物をまとめにいきます。
それから、会社もやめようと・・・」
「だめだ。それは許さない。」
「どうして?もう私はがむしゃらに働かなくても生きられるようになったんだから・・・楢司で働かなくてもべつの就職先をさがして田舎でのんびり過ごします。」
「就職先を変えるのはかまわないが、とにかく君の家に帰らなきゃだめだ。」
「嫌です!毎日、告白ばかりされるようなところへは・・・帰れないわ。
私はその気がないんですから、怖いじゃないですか!」
「怖いのか。僕が弟たちを黙らせたら納得してくれないか?」
「嫌です。黙っても・・・何をされるかと思うと。
小夜さんがずっといてくれるわけじゃないし、ほとんどいないし。」
「僕と話がしたいんじゃなかったのかい?」