普通に輝くOL
そう直登から言われて、郁香はまた少し涙を浮かべたが、すぐに振り払って強く言った。
「彰登さんは深夜も強いから、もう話なんてできません。
あの人、謝ってはくれるけど、その次にはまた嫌なこと言うもの。」
「そっか・・・不愉快な思いばかりさせてたんだ、弟に代わって謝るよ。
あいつはやっぱり、気ままに外でやってればいい。
家だってあるんだし、出ていってもらうようにするから。
優登は、話せばきっとわかってくれるし、ずっと待つと思う。
気に入らなければ、振ってやればいい。
未練たらしいやつじゃないし、自分できちんと区切りをつける硬派だよ。」
「だけど・・・ここにいた方が、花司家と直接つながりがなくなるから気が楽です。」
「そうかな?じゃ、直郁すずらん荘って名前はどうしてつけた?
僕の名前と、僕が君に送った花からつけたんじゃないのか?」
「たまたま連想したものからとっただけです。深い意味なんてありません。」
「名前はまあいい。けど・・・部屋は宿じゃないな。
せいぜい、保養所どまりだ。
共用するところがとても多いし、研修所が一番適している。
徹朗じいさんが生きてたときは、うちの会社の若者が定期的にここを利用していたはずだ。
広報部長もここでの懐かしい思い出話をきかせてくれたよ。
だから、君がここにいるんじゃないかって思ったんだけどね。」
「えっ!部長が・・・私は何も言ってないのに・・・。」
「本気で心配してくれてる人にはわかるものなのかもしれないな。」
「直にいも・・・心配した?」
「心配した。今だって、どうやって君を連れ戻そうかとヒヤヒヤドキドキしてる。」
「だから、あの家には帰りません。帰りたくありません。」
「まったく・・・強情だな。
ここにいても、さっきの彼が襲ってくるかもしれないぞ。」
「弥刀はそんなことしません。告白もしてきませんから。」
「なぜ、そういいきれる?幼なじみだって年頃になれば・・・って優登でわかってるだろう?」
「弥刀は優登とは違います。彼は・・・ここで最愛の人と働いていますから。」
「もしかして、彼の相手は男なのかな?」
郁香はこくんと頷いた。
「事情ありきな人物を採用したわけか・・・。
なら、その仲間がもっと幸せになれるように、君が然るべきところで稼いでやらないといけないな。
遺産からの利益だけじゃ、いずれ食いつぶしてしまうことになる。
そうだ・・・広報から秘書課へ変わってもらおうか。」
「何を勝手にそんなこと・・・私もみんなも細々とした生活でいいと思ってるし、会社だってもうそろそろ辞めようと・・・。」
「決めた。本日付で社長秘書を命じる。
辞令は明日わたすから、明日は出勤してきなさい。」
「嫌です。邸にも社長室にも絶対、行きませんから!」
「じゃ、力づくで連れ帰るしかないってことだな。
おいで。」
直登は郁香の両手を引っ張って外に出ようとした、そのとき。
直登の目の前に芽衣子が包丁を突きつけた。
「郁香はいちばん大切な私のお友達よ。
郁香が帰りたくないって言ってるんだから、好きなようにさせてあげてよ、おじさん。」
「友達思いなのはいいことだと思うし、僕をオジサン扱いしてくれることもかまわないけどさ。
僕は彼女を心配しているたくさんの社員と家族のため、彼女を連れ帰らなきゃいけないんだ。
それに・・・郁香は本当はここに居たいわけじゃないだろう?」
「花司家になってる楢崎の邸よりは、ここにいる方が居心地がいいの。
いい加減にわかってよ。
嫌だから家出してきたんだから、嫌なところにはもどらないのは当たり前でしょ。
それ以上、私を引っ張って行こうとすれば、芽衣子に突き刺されるわよ。」
「芽衣子さんは郁香を一番大切なお友達と言ってくれたのに、郁香はその芽衣子さんを犯罪者にしてしまうのか?」
「もう、屁理屈ばっかり!だったら私が刺して逃げるわ。
芽衣子包丁を私にちょうだい。」
「血迷ったのか?君を犯罪者にはさせない・・・どうせ刺されるくらいなら!」
「ん、ぁ!きゃあ!・・・」
包丁を持った芽衣子の直前で、直登はつかんだ郁香の両手を引き寄せて、唇にキスをしたまま押し倒した。
芽衣子は驚いて、目を見開いたまま硬直している。
(うんんん・・・こんな直登さん知らない。すごく怖い顔してる。
本気で怒ってるんだわ。でも、私は、拒めない。どうして・・・押し返すことも力すら入らない。
芽衣子に近くで見つめられながら、直登さんにキスされてるのを私・・・喜んでいる!)
「君がこのまま、まだ言うことをきかないなら、このまま先のステップへと進むけど・・・どうする?」
「んぁっ!秘書になるわ。出社すればいいんでしょ。
でも、邸だけは嫌!今、帰りたくないの。どうしても帰りたくないの!」
「彰登さんは深夜も強いから、もう話なんてできません。
あの人、謝ってはくれるけど、その次にはまた嫌なこと言うもの。」
「そっか・・・不愉快な思いばかりさせてたんだ、弟に代わって謝るよ。
あいつはやっぱり、気ままに外でやってればいい。
家だってあるんだし、出ていってもらうようにするから。
優登は、話せばきっとわかってくれるし、ずっと待つと思う。
気に入らなければ、振ってやればいい。
未練たらしいやつじゃないし、自分できちんと区切りをつける硬派だよ。」
「だけど・・・ここにいた方が、花司家と直接つながりがなくなるから気が楽です。」
「そうかな?じゃ、直郁すずらん荘って名前はどうしてつけた?
僕の名前と、僕が君に送った花からつけたんじゃないのか?」
「たまたま連想したものからとっただけです。深い意味なんてありません。」
「名前はまあいい。けど・・・部屋は宿じゃないな。
せいぜい、保養所どまりだ。
共用するところがとても多いし、研修所が一番適している。
徹朗じいさんが生きてたときは、うちの会社の若者が定期的にここを利用していたはずだ。
広報部長もここでの懐かしい思い出話をきかせてくれたよ。
だから、君がここにいるんじゃないかって思ったんだけどね。」
「えっ!部長が・・・私は何も言ってないのに・・・。」
「本気で心配してくれてる人にはわかるものなのかもしれないな。」
「直にいも・・・心配した?」
「心配した。今だって、どうやって君を連れ戻そうかとヒヤヒヤドキドキしてる。」
「だから、あの家には帰りません。帰りたくありません。」
「まったく・・・強情だな。
ここにいても、さっきの彼が襲ってくるかもしれないぞ。」
「弥刀はそんなことしません。告白もしてきませんから。」
「なぜ、そういいきれる?幼なじみだって年頃になれば・・・って優登でわかってるだろう?」
「弥刀は優登とは違います。彼は・・・ここで最愛の人と働いていますから。」
「もしかして、彼の相手は男なのかな?」
郁香はこくんと頷いた。
「事情ありきな人物を採用したわけか・・・。
なら、その仲間がもっと幸せになれるように、君が然るべきところで稼いでやらないといけないな。
遺産からの利益だけじゃ、いずれ食いつぶしてしまうことになる。
そうだ・・・広報から秘書課へ変わってもらおうか。」
「何を勝手にそんなこと・・・私もみんなも細々とした生活でいいと思ってるし、会社だってもうそろそろ辞めようと・・・。」
「決めた。本日付で社長秘書を命じる。
辞令は明日わたすから、明日は出勤してきなさい。」
「嫌です。邸にも社長室にも絶対、行きませんから!」
「じゃ、力づくで連れ帰るしかないってことだな。
おいで。」
直登は郁香の両手を引っ張って外に出ようとした、そのとき。
直登の目の前に芽衣子が包丁を突きつけた。
「郁香はいちばん大切な私のお友達よ。
郁香が帰りたくないって言ってるんだから、好きなようにさせてあげてよ、おじさん。」
「友達思いなのはいいことだと思うし、僕をオジサン扱いしてくれることもかまわないけどさ。
僕は彼女を心配しているたくさんの社員と家族のため、彼女を連れ帰らなきゃいけないんだ。
それに・・・郁香は本当はここに居たいわけじゃないだろう?」
「花司家になってる楢崎の邸よりは、ここにいる方が居心地がいいの。
いい加減にわかってよ。
嫌だから家出してきたんだから、嫌なところにはもどらないのは当たり前でしょ。
それ以上、私を引っ張って行こうとすれば、芽衣子に突き刺されるわよ。」
「芽衣子さんは郁香を一番大切なお友達と言ってくれたのに、郁香はその芽衣子さんを犯罪者にしてしまうのか?」
「もう、屁理屈ばっかり!だったら私が刺して逃げるわ。
芽衣子包丁を私にちょうだい。」
「血迷ったのか?君を犯罪者にはさせない・・・どうせ刺されるくらいなら!」
「ん、ぁ!きゃあ!・・・」
包丁を持った芽衣子の直前で、直登はつかんだ郁香の両手を引き寄せて、唇にキスをしたまま押し倒した。
芽衣子は驚いて、目を見開いたまま硬直している。
(うんんん・・・こんな直登さん知らない。すごく怖い顔してる。
本気で怒ってるんだわ。でも、私は、拒めない。どうして・・・押し返すことも力すら入らない。
芽衣子に近くで見つめられながら、直登さんにキスされてるのを私・・・喜んでいる!)
「君がこのまま、まだ言うことをきかないなら、このまま先のステップへと進むけど・・・どうする?」
「んぁっ!秘書になるわ。出社すればいいんでしょ。
でも、邸だけは嫌!今、帰りたくないの。どうしても帰りたくないの!」