普通に輝くOL
そう言ったものの、郁香はチラと直登の顔を見ると、さびしげな表情を浮かべていて、何だかかわいそうな気持ちになった郁香は思わず、
「あの、お庭でお弁当とかだったらご一緒しますけど。」
と言ってしまった。
「ほんとに!!じゃ、頼むよ。
やった!」
あんまりうれしそうにしている直登に、郁香はちょっぴりかわいいと思ってしまうのだった。
その日の夜は、花司家の兄弟が直登が召集をかけたので全員が集まった。
「以前話したことがあるけど、こちらのお嬢さんが楢崎郁香さんだ。
本人の希望で会社では伊佐木郁香さんってお母さんの姓を名乗っているけど、まぎれもなく正真正銘の楢崎徹朗氏のお孫さんだから、よろしく頼む。」
「郁香です。私は昨日突然おじいさんのことを知らされて、正直驚いています。
学生のときまで母といっしょにやってきて、母が亡くなってからも自分で学校を卒業して就職して独り暮らしをしていました。
直登さんのご好意でここで暮らさせてもらえることになったんですけど、皆さんの中にはきっと私をよく思われない方もおられるんですよね。
だったら、ここではっきりと言ってもらえませんでしょうか。
私、すぐに出て行きますから。
おじいさんの遺産とかも、突然出てきてもらうなんていうのもずうずうしいと思うので、直登さんにおまかせします。
おじいさんの会社を支えて来られた方でうまく使っていただけたらと思いますので。」
「ちょっと待った!・・・兄さんは彼女にすべてを話していないのか?」
「あ・・・うん。一度にどっさりと人生を左右するような話をするのは女の子にはしんどいんじゃないかと思ってね。
とりあえず、家族の暮らしを知らないっていうから、僕はここでみんなで暮らしてもらおうかと思ったのさ。」
「なるほど・・・でも、財産の話は必ず知ることになるし、僕らもいらぬ誤解をされるのはごめんだから話した方がいいと思うんだ。
それに、彼女だってさっき少しふれてくれたけど、会社を支えてきた人でって言ってくれたんだからはっきりさせよう。」
次男の広登がきびしい表情で意見を述べ、楢崎徹朗の財産分与について話し始めた。
「実際の手続きは弁護士がやるけれど、現実問題を話しておきます。
君のおじいさんの楢崎徹朗氏は僕たち兄弟、とくに直登兄さんにも遺言を残してくれませんでした。
つまり、財産はすべて君が相続することになるんだ。
で、財産はざっとだけ説明すると、この家と土地。
会社の本社ビルと土地。別荘と営業所の建物と土地。
あと株式と預貯金等など・・・。」
「そ、そんなぁ・・・私どうすれば・・・。」
「本来なら、君が会社の社長を継いで婿取りをすれば、僕たちはみんな解雇されて放り出されても文句を言えないということになるんだが・・・それじゃあまりにひどすぎると思わないか?」
「はい・・・そうですね。
私はそんなの狙ってたわけじゃないし・・・私の実力で得たものでないものがそんなに大きいなんて怖いです。」
「そうだろう・・・。だから君がいったん相続したら、僕たちに安く売ってもらった形にしてもらいたい。
僕らは会社をここまでに大きくしてきたんだから、権利があると思う。
どうだろう?
君は現金でもらう方が気楽でいいだろうし。」
「ま、まぁ・・・そうかも。」
「じゃあ話が早い。早速来週にでも弁護士にきてもらって財産分け会議をすることにしよう。」
「待てよ・・・広登。それは彼女に対して強引すぎで失礼じゃないか?
うちの都合で勝手にすすめてるだけじゃないか。
彼女は財産をすべて見てもいないんだぞ。
徹朗じいさんは、両親を事故で失った俺たちを誰一人どこかへやることもなく、この家へ置いてくれて食わしてくれただけじゃなくて、教育も受けさせてくれたし、立派な社会人に育ててくれた。
そのかわり、彼女は僕たちとは逆にさびしくて慎ましやかな生活を余儀なくされてきたんだ。
本来なら、僕たちと同じかそれ以上にかわいがってもらってしかるべきなのに!だ。
そんなに急がなくてもいいんじゃないか?」
「兄さんは人間ってものがわかってないよ。
会社をやってきてわかるだろ。大金があっても他人には一文たりとも出すのが惜しくなる人間を。
彼女だって今は実感がないけれど、見てまわれば欲が出て、そのうち好きな男が出来ればそいつに半分は持っていかれてしまうよ。」
「おまえは詩織さんにそう言われたのか?
早くもらって、子どもに相続する気でいるのか?」
「あの、お庭でお弁当とかだったらご一緒しますけど。」
と言ってしまった。
「ほんとに!!じゃ、頼むよ。
やった!」
あんまりうれしそうにしている直登に、郁香はちょっぴりかわいいと思ってしまうのだった。
その日の夜は、花司家の兄弟が直登が召集をかけたので全員が集まった。
「以前話したことがあるけど、こちらのお嬢さんが楢崎郁香さんだ。
本人の希望で会社では伊佐木郁香さんってお母さんの姓を名乗っているけど、まぎれもなく正真正銘の楢崎徹朗氏のお孫さんだから、よろしく頼む。」
「郁香です。私は昨日突然おじいさんのことを知らされて、正直驚いています。
学生のときまで母といっしょにやってきて、母が亡くなってからも自分で学校を卒業して就職して独り暮らしをしていました。
直登さんのご好意でここで暮らさせてもらえることになったんですけど、皆さんの中にはきっと私をよく思われない方もおられるんですよね。
だったら、ここではっきりと言ってもらえませんでしょうか。
私、すぐに出て行きますから。
おじいさんの遺産とかも、突然出てきてもらうなんていうのもずうずうしいと思うので、直登さんにおまかせします。
おじいさんの会社を支えて来られた方でうまく使っていただけたらと思いますので。」
「ちょっと待った!・・・兄さんは彼女にすべてを話していないのか?」
「あ・・・うん。一度にどっさりと人生を左右するような話をするのは女の子にはしんどいんじゃないかと思ってね。
とりあえず、家族の暮らしを知らないっていうから、僕はここでみんなで暮らしてもらおうかと思ったのさ。」
「なるほど・・・でも、財産の話は必ず知ることになるし、僕らもいらぬ誤解をされるのはごめんだから話した方がいいと思うんだ。
それに、彼女だってさっき少しふれてくれたけど、会社を支えてきた人でって言ってくれたんだからはっきりさせよう。」
次男の広登がきびしい表情で意見を述べ、楢崎徹朗の財産分与について話し始めた。
「実際の手続きは弁護士がやるけれど、現実問題を話しておきます。
君のおじいさんの楢崎徹朗氏は僕たち兄弟、とくに直登兄さんにも遺言を残してくれませんでした。
つまり、財産はすべて君が相続することになるんだ。
で、財産はざっとだけ説明すると、この家と土地。
会社の本社ビルと土地。別荘と営業所の建物と土地。
あと株式と預貯金等など・・・。」
「そ、そんなぁ・・・私どうすれば・・・。」
「本来なら、君が会社の社長を継いで婿取りをすれば、僕たちはみんな解雇されて放り出されても文句を言えないということになるんだが・・・それじゃあまりにひどすぎると思わないか?」
「はい・・・そうですね。
私はそんなの狙ってたわけじゃないし・・・私の実力で得たものでないものがそんなに大きいなんて怖いです。」
「そうだろう・・・。だから君がいったん相続したら、僕たちに安く売ってもらった形にしてもらいたい。
僕らは会社をここまでに大きくしてきたんだから、権利があると思う。
どうだろう?
君は現金でもらう方が気楽でいいだろうし。」
「ま、まぁ・・・そうかも。」
「じゃあ話が早い。早速来週にでも弁護士にきてもらって財産分け会議をすることにしよう。」
「待てよ・・・広登。それは彼女に対して強引すぎで失礼じゃないか?
うちの都合で勝手にすすめてるだけじゃないか。
彼女は財産をすべて見てもいないんだぞ。
徹朗じいさんは、両親を事故で失った俺たちを誰一人どこかへやることもなく、この家へ置いてくれて食わしてくれただけじゃなくて、教育も受けさせてくれたし、立派な社会人に育ててくれた。
そのかわり、彼女は僕たちとは逆にさびしくて慎ましやかな生活を余儀なくされてきたんだ。
本来なら、僕たちと同じかそれ以上にかわいがってもらってしかるべきなのに!だ。
そんなに急がなくてもいいんじゃないか?」
「兄さんは人間ってものがわかってないよ。
会社をやってきてわかるだろ。大金があっても他人には一文たりとも出すのが惜しくなる人間を。
彼女だって今は実感がないけれど、見てまわれば欲が出て、そのうち好きな男が出来ればそいつに半分は持っていかれてしまうよ。」
「おまえは詩織さんにそう言われたのか?
早くもらって、子どもに相続する気でいるのか?」