普通に輝くOL
直登はがっかりした顔をしながら、呟いた。
「藤子さんのごちそうを逃しちゃったのは残念だった?」
「残念だよ・・・においだけ味わったら現実は点滴のごちそうになってしまってさ・・・。
悔しいなぁ。」
「じつはぁ~~~残念がると思ったから、ゴハンとおかずをパックして持ってきてるのよ。
点滴のごちそうが終わったら食べるといいわ。」
「おぉ!やった。ありがとな。」
「藤子さんはあっちの家にまたもどっちゃったの。
いちおう、彰登さんたちに説明もしなきゃいけないしね。
で・・・倒れる前ってもしかして、例のお年寄りが住んでるマンションの仕事してたの?」
「碓井にきいたのか?」
「うん。直接話をしてたんでしょう?
手ごたえはあった?」
「いいや。個人的な接点が親密じゃないのに、別れたがらない人たちは意地になってしまう。」
「そう・・・。場所的には老朽化して住めないのはわかってるはずだよね。
しかも、住んでる戸数が少なければ、修繕費だってとても出せる額じゃなくなってるのもね・・・。」
「すべてわかっているけど、譲れない。
まぁ、お金がどっさりあってもあの人たちはどうなんだろうなって思うくらいさ。
あぁ・・・ここにきてのダウンは痛いなぁ。
たぶんちょっとしたアイデアさえあれば、僕なら何とかしてあげられると思うんだがな。
何とかしてやりたい。
ごめん・・・泣き言を言ってしまった。」
「いいよ。いっぱい泣いちゃって。
社長の涙をいちばん近くで見れるなんて役得だわ。」
「役得って何の得があるんだよ。」
「やぁ~い社長のクセにめそめそしてかっこわるぅ~い!って自分の立場が悪くなりそうなときに、使えるじゃない?」
「ちぇっ!何、それ。
僕は郁香に弱みをにぎられたってこと?
ひどいなぁ。たしかに、かっこわるいとこばかり見られてるけど・・・。」
「ねぇ、そのマンションに私が行ってきてはダメ?」
「そういうと思った・・・。けど、いいのか?
たぶんそういう君には何かいい方法があるのかな・・・とは思うんだけど。」
「いい方法かどうかは相手にきいてみないとまだわからないけど、私が提案できることもあるかも?って2,3考えるところがあるだけよ。
社長の許可がおりたところで、私なりにがんばってみるから、ゆっくり養生してね。」
「はぁ・・・これじゃ病状の悪いおとっつぁんを娘が救おうとしてるみたいだなぁ。」
「何を老け込んでるのよ。娘より9つ上の父なんていないわ!
ねぇ、1つ質問してもいい?」
「ん?」
「女性に対してアレルギーが出る以前の直登さんって・・・会社では女性に囲まれてたの?」
「へぇ?そんなことあるわけないって。
彰登や優登じゃあるまいし・・・。
重役クラスで女性に不自由しないのは、広登の方だったよ。
その集まる女性を袖にして選ばれたのが・・・奥さんの詩織さんだよ。
美人で裕福で厳格な家庭の娘たち・・・がいた。」
「娘たちってことは、直登さんは詩織さんの家に行ったことがあるの?」
「ああ、詩織さんは三女。次女の美里さんはアメリカ人の恋人ともうすぐ結婚らしい。
長女の朱莉は・・・僕と婚約する前に別れてしまった。」
「婚約する前ってどういうこと?
結婚に踏み切れない何かがあったの?
直登さんのことだから、彼女を尊重しすぎて待ちすぎたら誰かに取られちゃったとか?」
「ははは・・・君はほんとに容赦ないな。」
「うぁ、図星だった。・・・申し訳ない。
ううん。ごめんなさい。
だけど、これからもしよ、朱莉さんみたいに婚約に踏み切ろうと思うような人が現れたら、待ってあげちゃいけないと思う。
直登さんは相手のいうことをじっくり聞いてあげ過ぎだよ。
話半分にしておいていいから、自分の思いを前に出さなきゃ・・・。」
「そうだね。いいなと思った相手の話は男女関係なくだけど、すべてきいてからってつい、思ってしまうクセがあるのさ。
そんな話をきくのが楽しいと思ってしまってね。
郁香と初めてしゃべったときも、まずは郁香の境遇を先にきいてしまいたかった。
だけど、けっこうがんばって住んでほしいって思いは前に出したはずだけどね。」
「そういえば・・・そうね。
今の同棲生活も、直登さんらしからぬ行動だもの。
あっ・・・私そろそろ仕事いってきます。
私は元気なのに、社に出ないって偉そうにしすぎってつるされてしまいそうだわ。」
「手間のかかる社長を面倒見てたって言えばいいじゃないか。」
「嫌ですよ。いっしょに住んでるのがバレバレになっちゃいます。
私は新しい彼氏の思いやりでもって、住まわせてもらってることになってるんですからね。」
「そうだったな。僕は新しい彼氏だった。ふふっ」
「もう、冗談はもういいですってば。
とにかく、碓井さんに住所とかきいて行ってきますから。じゃ。」
「すまない、気をつけて。」
(冗談なんか言ったつもりはないんだけどな。)
「藤子さんのごちそうを逃しちゃったのは残念だった?」
「残念だよ・・・においだけ味わったら現実は点滴のごちそうになってしまってさ・・・。
悔しいなぁ。」
「じつはぁ~~~残念がると思ったから、ゴハンとおかずをパックして持ってきてるのよ。
点滴のごちそうが終わったら食べるといいわ。」
「おぉ!やった。ありがとな。」
「藤子さんはあっちの家にまたもどっちゃったの。
いちおう、彰登さんたちに説明もしなきゃいけないしね。
で・・・倒れる前ってもしかして、例のお年寄りが住んでるマンションの仕事してたの?」
「碓井にきいたのか?」
「うん。直接話をしてたんでしょう?
手ごたえはあった?」
「いいや。個人的な接点が親密じゃないのに、別れたがらない人たちは意地になってしまう。」
「そう・・・。場所的には老朽化して住めないのはわかってるはずだよね。
しかも、住んでる戸数が少なければ、修繕費だってとても出せる額じゃなくなってるのもね・・・。」
「すべてわかっているけど、譲れない。
まぁ、お金がどっさりあってもあの人たちはどうなんだろうなって思うくらいさ。
あぁ・・・ここにきてのダウンは痛いなぁ。
たぶんちょっとしたアイデアさえあれば、僕なら何とかしてあげられると思うんだがな。
何とかしてやりたい。
ごめん・・・泣き言を言ってしまった。」
「いいよ。いっぱい泣いちゃって。
社長の涙をいちばん近くで見れるなんて役得だわ。」
「役得って何の得があるんだよ。」
「やぁ~い社長のクセにめそめそしてかっこわるぅ~い!って自分の立場が悪くなりそうなときに、使えるじゃない?」
「ちぇっ!何、それ。
僕は郁香に弱みをにぎられたってこと?
ひどいなぁ。たしかに、かっこわるいとこばかり見られてるけど・・・。」
「ねぇ、そのマンションに私が行ってきてはダメ?」
「そういうと思った・・・。けど、いいのか?
たぶんそういう君には何かいい方法があるのかな・・・とは思うんだけど。」
「いい方法かどうかは相手にきいてみないとまだわからないけど、私が提案できることもあるかも?って2,3考えるところがあるだけよ。
社長の許可がおりたところで、私なりにがんばってみるから、ゆっくり養生してね。」
「はぁ・・・これじゃ病状の悪いおとっつぁんを娘が救おうとしてるみたいだなぁ。」
「何を老け込んでるのよ。娘より9つ上の父なんていないわ!
ねぇ、1つ質問してもいい?」
「ん?」
「女性に対してアレルギーが出る以前の直登さんって・・・会社では女性に囲まれてたの?」
「へぇ?そんなことあるわけないって。
彰登や優登じゃあるまいし・・・。
重役クラスで女性に不自由しないのは、広登の方だったよ。
その集まる女性を袖にして選ばれたのが・・・奥さんの詩織さんだよ。
美人で裕福で厳格な家庭の娘たち・・・がいた。」
「娘たちってことは、直登さんは詩織さんの家に行ったことがあるの?」
「ああ、詩織さんは三女。次女の美里さんはアメリカ人の恋人ともうすぐ結婚らしい。
長女の朱莉は・・・僕と婚約する前に別れてしまった。」
「婚約する前ってどういうこと?
結婚に踏み切れない何かがあったの?
直登さんのことだから、彼女を尊重しすぎて待ちすぎたら誰かに取られちゃったとか?」
「ははは・・・君はほんとに容赦ないな。」
「うぁ、図星だった。・・・申し訳ない。
ううん。ごめんなさい。
だけど、これからもしよ、朱莉さんみたいに婚約に踏み切ろうと思うような人が現れたら、待ってあげちゃいけないと思う。
直登さんは相手のいうことをじっくり聞いてあげ過ぎだよ。
話半分にしておいていいから、自分の思いを前に出さなきゃ・・・。」
「そうだね。いいなと思った相手の話は男女関係なくだけど、すべてきいてからってつい、思ってしまうクセがあるのさ。
そんな話をきくのが楽しいと思ってしまってね。
郁香と初めてしゃべったときも、まずは郁香の境遇を先にきいてしまいたかった。
だけど、けっこうがんばって住んでほしいって思いは前に出したはずだけどね。」
「そういえば・・・そうね。
今の同棲生活も、直登さんらしからぬ行動だもの。
あっ・・・私そろそろ仕事いってきます。
私は元気なのに、社に出ないって偉そうにしすぎってつるされてしまいそうだわ。」
「手間のかかる社長を面倒見てたって言えばいいじゃないか。」
「嫌ですよ。いっしょに住んでるのがバレバレになっちゃいます。
私は新しい彼氏の思いやりでもって、住まわせてもらってることになってるんですからね。」
「そうだったな。僕は新しい彼氏だった。ふふっ」
「もう、冗談はもういいですってば。
とにかく、碓井さんに住所とかきいて行ってきますから。じゃ。」
「すまない、気をつけて。」
(冗談なんか言ったつもりはないんだけどな。)