普通に輝くOL
広登は真っ赤な顔をして怒り出し、今にも直登に掴みかかりそうな場の雰囲気になった。


すると、長女の小夜が冷めた表情で口を開いた。


「広登兄さんは露骨すぎだけど、マスコミだってそういう話は好きだと思うわ。
おじいさんに文句を言いたくても本人はいないわけだし、私は自分の体で勝負してお金は儲けてきたんだからおじいさんの財産なんてどうでもいいけど、この娘がうちの家族顔してこの家で当たり前に過ごすのは気に入らないわ。

お金はあるんでしょ、自分の家を買って住めばいいだけじゃないの。
ここは私たち家族の家よ。」


「だが、おまえも広登も出て行った人間じゃないか。
僕が召集しなければ、この広い家に優登と清登と僕だけだ。
それも、同じ時間にいることは少ないし・・・。

僕一人だけでいるのに、使用人をたくさん雇っておくわけにもいかないし、今は藤子さんしか家事は手伝ってもらっていないけど、その藤子さんもさびしいと言ってる。

小夜の話は矛盾してるだろ。」



「気持ちの問題よ!たまに帰ってきて、他人がいたらホッとできないでしょ。
そりゃ、直にいが結婚してここに家族で住んでるなら、あきらめもつくけど、下宿屋でもないのに他人を入れるのは嫌よ。」


「僕は他人だと思ってない!
おじいさんはよく孫に会いたいと言っていた。
僕は、孫の力になってほしいって言われてたから・・・それを叶えてやりたいし、本社だけは僕がやっていかなければならない手前、譲ってもらわなきゃならないと思ってる。

その礼というかできる限りのことは僕はしてあげたいんだ。
ちょうど、偶然とはいえ彼女はうちの会社に就職しているんだし。

おじいさんのつながりがなくても、社員の生活を守るのは社長や上司の役目だろ!」



「ほぉ~社長となるとご立派なご意見いうんだね。」


と3男の彰登が話に割り込んできた。


「彰登は取引先だから別の意見があるのか?」


「いや、俺は彼女をよく知ってるというか・・・1年世話になってるから大歓迎だよ。

できることなら、この家ではなくて俺と住もうかと誘いたいところだけどね。」


「えっ、ぇぇぇえええええ!!」


「デザインとか売り込みとかいい仕事するんだよね~。この娘は・・・。
でも、自分のことはこのとおりのほんわかさんでさ。

こういう女は俺みたいな鋭い男がそばにいた方がいいんだよ。」



「うわっ、彰登それって告白じゃん!」


「私がほんわかさんなのは多少認めるけど・・・あなたと同棲なんてありえないから!」


「照れなくてもいいのに。」


「違う!ってば。・・・あの・・・私やっぱりここには住めません。
望まれてお嫁に行くじゃないけれど、嫌な思いされる方がいると思ったら私もいい気持ちしないです。」


「俺はほんわか姉さん大歓迎だよ。
コンビニでバイトしてると郁香とよく会うし、帰ったら郁香とまた会えるんだったらうれしいよ。」


「多数決とった方がよさそうだな。」


「多数決とるけど、家庭があるやつと1週間のうち1日と家にいないやつはさがっててくれ。」


「ええ、私もなの?じゃ、直にいと優登と清登だけじゃないの。」


「僕たちの取り決めってあったよな。
自分の家庭を持ったり、この家で暮らすのが不都合になった者は自分の力で別宅に住むという取り決め。

それは僕たちにもまだ継続中なんだ。
僕だって結婚すれば、ここを出ることになるだろう。
そして最後にここに住む人間がここの主になればいい。」
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