普通に輝くOL
堂原学院・・・中学、高校、大学の一貫教育をしている男子校である。

しかも、全生徒の70%が地方から集まった寮生という。


中くらいの大きさのマンション規模の棟数が30棟ほどすでにできあがっていた。


「うわぁ・・・すごい。
これ全部、男の子が住むのよね。
ちょっとすごすぎて怖いくらい・・・・」


「そうでもありませんよ。教師にも女性はいるし、寮も寮母さんと世話をする担当は女性が圧倒的に多いです。
ただし、40歳以上の方ばかりですが。ふふふ。」


いつのまにか郁香の後ろには銀縁メガネにやや茶髪の男が立っていた。


「なんとなく彰登さんの雰囲気が・・・他人なのに。」


「花司彰登のことかな?
申し遅れました。僕は香西明之。堂原学院理事で経理課長と兼任しております。
彰登とは中学と高校の同級生でライバルでもありました。」


「楢崎郁香です。花司直登社長の秘書として管理の打ち合わせ会議に参加させていただきます。
彰登さんとは以前、広報担当だったときにいっしょに仕事をしていました。
でも、おふたりは同級生でライバルなのに見かけが似ていますよね。」



「彰登は何かと僕の真似をするんですよ。
僕はここではかなり押さえた風貌をしているつもりですが、プライベートではもっとおしゃれなメガネにしているし、髪も固めてはいません。

あ、もうすぐ会議が始まります。
もし会議が終わってから少し時間がおありでしたら、校内を案内しますがいかがですか?
男子校ですが、怖くはありませんよ。

お客様には危害を加えるものはいません。
僕もついていますしね。」



「でも・・・社長が・・・。」



「僕も見学させていただきたいですね。よろしいですか?」


「あ・・・あなたはもしや・・・。彰登の・・・。」



「兄の直登です。楢司コーポレーションの代表です。
秘書を置いて帰るわけにもいきませんのでね。」


「そうでしたか、なんかあなたも僕に似てると思って・・・びっくりしました。
見学はOKですよ。
やっぱり兄弟って似ていますね。
こりゃ、僕の方が見た目を変えないとまずそうですね。あははは。」



郁香はこの鼻持ちならない香西という男に不思議な感覚をおぼえた。

見かけが彰登に似ている。

それを彰登の方がまねていると表現した。

百歩譲って彰登の方がまねをしているとすると、彰登と直登がメガネをかけて別人に見えにくい状況はどういうことなのだろう?

彰登のことを香西がまねているとしたら話はおかしくはならないはずなのに。


そんなどうでもよいテーマが郁香の頭をかけめぐってしまった。


そして、そんなことを考えたことを直登にはわかってしまったのか、とても気分を害しているようだ。

会議中、反論こそしなかったが、ときどき香西の方を見て唇の端をゆがめているのを郁香は感じてしまった。



(もしかして・・・嫉妬してくれてるの?
はっきりと好き表現した弟たちには、こんな表情なんてしなかったじゃない。

他人にはそうなの?でも・・・長月さんにもこんな顔なんてしていない・・・どうして、香西にはこんなに敵意のある表情をするのかしら。)
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