普通に輝くOL
会議の後で、高下美代子という女から郁香に電話があった。

本来なら1週間前に会っていたはずの女性。


直登にどんな素性の女性なのかを代わりに会って知るつもりだったが、結局約束した時間には現れず、連絡をとろうとしたがなかなかつかまらなかった。


「お会いするお約束を破ってしまってすみませんでした。
少し、気が動転してしていましたので、誰にも会うことをひかえてしまっていたんです。」


「気が動転って・・・何かあったんですか?」


「ええ。直登さんの子どもがいるってわかって・・・。」



「え!?はぁ・・・?あの・・・ほんとに直登さんなんですか?
楢司コーポレーションの社長の花司直登さんですか?

彰登さんとか優登さんじゃなくて?」


「直登さんです。子どもの父親は直登さんですけど・・・お付き合いのあったのは広登さんなんですけど。」



「なっ!あの・・・もしもし?お話がよく理解できないというか理解に苦しんでいるんですけど。
と、とにかく会って詳しいことをお話していただけませんか?

秘書の私だったらあなたのお力になれるかもしれないですし、これからいかがでしょうか?」


思わず郁香は高下美代子を誘わずにはいられなかった。


(どういうことなの?女性アレルギーのある直登さんが・・・女性を妊娠させた?
面識がないと言っていたから、私が接触することにしたのに。どうして?

それとなぜ会う約束だった日をすっぽかしたのに、今こんな電話してくるの?)


高下美代子は1時間後に会社の裏手にある喫茶店まで出てこれることを承諾して電話はとりあえず切った。


直登はそんな郁香の様子をすぐにおかしいと思い、誰から電話だったかを問いただされた。



「高下美代子さんです。
直登さんの赤ちゃんを身ごもられているそうです。」


「そう、僕の子どもをね・・・って・・・おい、そんなわけない!
面識がないって前も言ったのに、どうしてそんなことになるんだ?」


「おうかがいしますけど、ほんとに・・・絶対に面識がない女性なんですか?」


「当たり前だ!郁香に嘘をつく意味がわからない。
妊娠させたってことは、相手の女性に触れていなければできないぞ。

しかも、握手とか偶然の接触なんかではなくて、ぴったりとじっくりと触れていることになる。
そんなことは郁香以外の女性には無理だ。
握手でも、15分後くらいには少し湿疹が出てしまうのに。」


「そうですよね・・・だから私これから会うことにしたんですけど・・・」


「僕も立ち会うよ。直接、その女性に話をききたい。
なんとか夜のスケジュールを調整して、他の仕事を明日にまわしてくれないか?」


「わかりました。」


結局、直登の予定していた仕事は広登が受けることになり、直登は高下美代子に会うことになった。
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