普通に輝くOL
直登は広登と碓井とでお祝いの集計だの、名簿だの確認をすると、帰る準備をしていた。
そこへ広登と詩織がきて先日の愛人騒ぎのおわびだといって温泉の宿泊券を詩織が直登に手渡した。
「2人は行かないのかい?」
「私たちは育児が大変なときだから、行けないのよ。
新婚旅行だって未定ってきいたから、これででもいってきてほしいと思って。」
「そうか・・・ありがとう。遠慮なく使わせてもらうよ。」
「若くてかわいい嫁さんもらったからって、会社で仕事にならなくなったとは言うなよ。」
「そんなこと・・・あ、あるかもなぁ。あははは。
じゃ、僕はそろそろもどるよ。
温泉の話で郁香を驚かせてやらないとな。
お疲れ。ありがとう。」
一方、自宅にたどりついた郁香は藤子に着替えてくるように言われて先に自室へと向かった。
ガタン・・・・ガタッ・・・ガタガタ・・バタン!
「郁香さん?どうかされたんですか・・・すごい音がしましたが何か・・・あっ!」
藤子は台所でエプロンがけをして食事の用意をしようとしていたが、部屋の方ですごい男がしたので郁香の部屋へと小走りでいってみると、郁香の部屋には郁香の履いていたスリッパと式場からもどってきたときの服が残されており、本人の姿は消えてしまっていた。
「郁香さん!郁香さん!・・・どこへ・・・何か手がかりでも・・・これは普通じゃない。
誰かが家に忍び込んでいたってこと?
セキュリティは直登さんがしっかりとされていたし、これはどういうことかしら。」
藤子が郁香の机の上に斜めにずらしてメモ用紙が積んであるのを見て、色はついていないのに強い筆圧だけが残っているのに気がついたので、鉛筆でこすってみると・・・
「たすけて!」
というメッセージが現れた。
「大変だぁ!すぐに連絡をしないと・・・」
藤子はすぐに直登の携帯電話へと電話をいれようとすると、背後から何者かに頭を殴られてその場に倒れてしまった。
「ふみ・・・か・・・さん・・・。」
40分後、直登が帰宅して藤子が頭から血を流して倒れているのを発見した。
すぐに警察と救急車を呼び、弟たちにも連絡した。
そして郁香が家の中にいないか捜したが、郁香はいなかった。
しかし、救急隊から藤子がうわ言でメモを連呼していると連絡があり、直登は郁香の部屋のメモを見た。
「鉛筆でこすった?・・・・・!!!これは郁香のSOSじゃないか。」
直登は駐車場へ行き、何か手がかりはないか調べ始めた。
(意識がなくなっていない限り、郁香なら何かヒントを落としてくれているかもしれない・・・)
駐車場と出入り口を行ったり来たりしていると、優登が慌ててやってきた。
「郁香が連れ去られたって・・・ほんとなのか?」
「うん。僕がいっしょにもどっていたらこんなことには・・・。」
「で、手がかりは見つかった?」
「いや、今、ここを調べてるところだけど・・・まだ何も・・・僕はどうしたらいいんだ!」
「直にい、嘆いてないでとにかく手がかりを探すんだ。
そうだなぁ・・・あいつはひとりなら強気だが、藤子さんがいたなら自分より藤子さんを思いやった行動に出るはずだから、藤子さんにトドメをささないように自分に引き付けたんじゃないかな。
わざと家の外に何か投げるとか、音をたてるとかやってないかなぁ。」
「そ、そうだな・・・」
直登が玄関から公道へ出たところで丸めたティッシュペーパーが2コと新しい雑巾が落ちているのがわかって広げてみると、雑巾の裏に文字が書かれていた。
「これだ!・・・えっと、楢司本社から10m南へ」
「直にい、それって楢妃ハウス本社じゃないか?」
「あっ・・・確かにそうだ。
まさか、親会社に郁香を誘拐したい人物がいるってことなのか?」
楢妃ハウス(ならきさきはうす)は楢崎徹朗が主に経営に携わっていた会社だった。
しかし、徹朗の親友で共同経営者だった妃 孝義(きさきたかよし)の天才的な経営手腕で徹朗はこの会社からは早く手をひいてしまったのだった。
そして、孝義はどんどん会社を大きくしていって、現在は息子の妃 孝彦が代表取締役になっている。
(どうしてだ?楢妃ほどの会社でどうして郁香を奪う必要がある?
それとも社員個人が郁香と何かわけありな事情でもあるっていうのか・・・?)
直登は考えをはりめぐらしていた。
さらうにしてもなぜ結婚式当日でなければならなかったのか?
すると優登が思い出したように声をあげた。
「孝彦に以前、郁香のことをしつこくきかれたことがある。」
「何っ?」
「じいさんの遺産を相続するのは郁香ひとりなのかと質問されたよ。
俺はたぶん・・・としか言わなかった。
でもさぁ、孝彦の会社ってずっとずっと前にじいさんがかなりの額の金支払って会社の未来を託したってきいたぜ。
しかも、うちよりも規模がずっとでかいし、仕事の範囲も大きくて、下請けでもないうちに用事をちらほら言いつけてきたりするよなぁ。」
「そいつは郁香のことを金や財産以外に何かいってなかったのか?」
「そうだなぁ・・・お母さんがどうのこうのって・・・。
孝彦って妃の実の子じゃないのは直にいも知ってるよね。
あいつは物心ついたときには、妃家の奥さんの養子で愛されまくってた。
それをよく自慢もしてたよな。
実の親なんてもうどうでもいいって言ってたし、顔も知らないから妃のお母さんをものすごく愛してたんだ。」
そこへ広登と詩織がきて先日の愛人騒ぎのおわびだといって温泉の宿泊券を詩織が直登に手渡した。
「2人は行かないのかい?」
「私たちは育児が大変なときだから、行けないのよ。
新婚旅行だって未定ってきいたから、これででもいってきてほしいと思って。」
「そうか・・・ありがとう。遠慮なく使わせてもらうよ。」
「若くてかわいい嫁さんもらったからって、会社で仕事にならなくなったとは言うなよ。」
「そんなこと・・・あ、あるかもなぁ。あははは。
じゃ、僕はそろそろもどるよ。
温泉の話で郁香を驚かせてやらないとな。
お疲れ。ありがとう。」
一方、自宅にたどりついた郁香は藤子に着替えてくるように言われて先に自室へと向かった。
ガタン・・・・ガタッ・・・ガタガタ・・バタン!
「郁香さん?どうかされたんですか・・・すごい音がしましたが何か・・・あっ!」
藤子は台所でエプロンがけをして食事の用意をしようとしていたが、部屋の方ですごい男がしたので郁香の部屋へと小走りでいってみると、郁香の部屋には郁香の履いていたスリッパと式場からもどってきたときの服が残されており、本人の姿は消えてしまっていた。
「郁香さん!郁香さん!・・・どこへ・・・何か手がかりでも・・・これは普通じゃない。
誰かが家に忍び込んでいたってこと?
セキュリティは直登さんがしっかりとされていたし、これはどういうことかしら。」
藤子が郁香の机の上に斜めにずらしてメモ用紙が積んであるのを見て、色はついていないのに強い筆圧だけが残っているのに気がついたので、鉛筆でこすってみると・・・
「たすけて!」
というメッセージが現れた。
「大変だぁ!すぐに連絡をしないと・・・」
藤子はすぐに直登の携帯電話へと電話をいれようとすると、背後から何者かに頭を殴られてその場に倒れてしまった。
「ふみ・・・か・・・さん・・・。」
40分後、直登が帰宅して藤子が頭から血を流して倒れているのを発見した。
すぐに警察と救急車を呼び、弟たちにも連絡した。
そして郁香が家の中にいないか捜したが、郁香はいなかった。
しかし、救急隊から藤子がうわ言でメモを連呼していると連絡があり、直登は郁香の部屋のメモを見た。
「鉛筆でこすった?・・・・・!!!これは郁香のSOSじゃないか。」
直登は駐車場へ行き、何か手がかりはないか調べ始めた。
(意識がなくなっていない限り、郁香なら何かヒントを落としてくれているかもしれない・・・)
駐車場と出入り口を行ったり来たりしていると、優登が慌ててやってきた。
「郁香が連れ去られたって・・・ほんとなのか?」
「うん。僕がいっしょにもどっていたらこんなことには・・・。」
「で、手がかりは見つかった?」
「いや、今、ここを調べてるところだけど・・・まだ何も・・・僕はどうしたらいいんだ!」
「直にい、嘆いてないでとにかく手がかりを探すんだ。
そうだなぁ・・・あいつはひとりなら強気だが、藤子さんがいたなら自分より藤子さんを思いやった行動に出るはずだから、藤子さんにトドメをささないように自分に引き付けたんじゃないかな。
わざと家の外に何か投げるとか、音をたてるとかやってないかなぁ。」
「そ、そうだな・・・」
直登が玄関から公道へ出たところで丸めたティッシュペーパーが2コと新しい雑巾が落ちているのがわかって広げてみると、雑巾の裏に文字が書かれていた。
「これだ!・・・えっと、楢司本社から10m南へ」
「直にい、それって楢妃ハウス本社じゃないか?」
「あっ・・・確かにそうだ。
まさか、親会社に郁香を誘拐したい人物がいるってことなのか?」
楢妃ハウス(ならきさきはうす)は楢崎徹朗が主に経営に携わっていた会社だった。
しかし、徹朗の親友で共同経営者だった妃 孝義(きさきたかよし)の天才的な経営手腕で徹朗はこの会社からは早く手をひいてしまったのだった。
そして、孝義はどんどん会社を大きくしていって、現在は息子の妃 孝彦が代表取締役になっている。
(どうしてだ?楢妃ほどの会社でどうして郁香を奪う必要がある?
それとも社員個人が郁香と何かわけありな事情でもあるっていうのか・・・?)
直登は考えをはりめぐらしていた。
さらうにしてもなぜ結婚式当日でなければならなかったのか?
すると優登が思い出したように声をあげた。
「孝彦に以前、郁香のことをしつこくきかれたことがある。」
「何っ?」
「じいさんの遺産を相続するのは郁香ひとりなのかと質問されたよ。
俺はたぶん・・・としか言わなかった。
でもさぁ、孝彦の会社ってずっとずっと前にじいさんがかなりの額の金支払って会社の未来を託したってきいたぜ。
しかも、うちよりも規模がずっとでかいし、仕事の範囲も大きくて、下請けでもないうちに用事をちらほら言いつけてきたりするよなぁ。」
「そいつは郁香のことを金や財産以外に何かいってなかったのか?」
「そうだなぁ・・・お母さんがどうのこうのって・・・。
孝彦って妃の実の子じゃないのは直にいも知ってるよね。
あいつは物心ついたときには、妃家の奥さんの養子で愛されまくってた。
それをよく自慢もしてたよな。
実の親なんてもうどうでもいいって言ってたし、顔も知らないから妃のお母さんをものすごく愛してたんだ。」