普通に輝くOL
直登は何か気持ちの中で引っかかった気分だった。
(妃孝彦・・・父親から会社を継いだときに会ったことがある。
本社ではなく、自宅に挨拶へいって・・・そして・・・居間に通された・・・。
通される前に孝彦に出会った。
そう、居間で座って会話をしたんじゃない。
居間へ入る前に、同じものを眺めて、彼は言った。
『これは母の肖像画ですが、あったかい表情でしょう。
絶世の美女って感じじゃないんですけど、母は笑顔が最高で優しくて、しっかりしていて僕をびしっと叱ってくれたんです。
叱られたのが初めてだったんですが、涙を浮かべながら僕を必死に愛してくれてるのがわかってね。
僕も母を愛さずにはいられなかったんです。』
こいつマザコンなのかぁ?と思っていたが、彼にとってそれが初恋なのかもしれないな・・・と・・・・!!
そうだ!あの絵の女性・・・妃夫人は郁香に似ている。
そう・・・最近の郁香ときたら、かわいいのはもちろんだけど、大人の色香まで出てきてときどき聖母のような優しさもにじみ出てるよな。
もしや・・・孝彦が郁香に・・・!そう考えれば行先がわかるんじゃないのか?)
その頃、郁香は見るからに高価なベッドと寝具の中で目覚めていた。
起き上がって周りを見回すと、ドアが開いて直登と同じくらいの年齢に見える男が近づいてきた。
「誰?」
「驚かせてしまってすみません。
私は妃孝彦。名前くらいはご存じなのではありませんか?」
「親会社・・・の・・・社長・・・。」
「部下があなたに手荒いことをしてしまったことはお詫びいたします。
だが、私は君にいろいろとききたいことがありましてね。」
「ききたいこと?
こんな出会い方をしなきゃいけない用事なんですか?」
「じゃまが入らないように話すには、こうでもしないとね。
君が花司直登の妻になってしまった今となってはね。」
「どういうこと?」
「君は楢崎徹朗氏の孫っていうのは本当ですか?」
「ええ。おじいさんの秘書の方からいろいろと資料も見せていただきましたし、信じられない部分は私自身で病院にいって再検査も受けました。
それで間違いないと確認もしました。」
「なるほど・・・ウソではないようですね。
では、あらためて紹介させてもらいましょう。
私は君の兄の孝彦です。
私の母は妃唯香といいます。
お疑いなら、この部屋を出て右へ行ってごらんなさい。
母の肖像画があります。」
「私のお母さん・・・!?私の両親は事故でいっしょに亡くなって・・・どういうことなの?」
郁香は肖像画を見て驚いた。
まるで自分が仮装したようにそっくりな女性の絵があったから。
「私に身内が・・・いる?」
「ええ。そうなりますね。私の調べでは亡くなられたとおっしゃるご両親は里親さんだと思います。
まぁ施設ではいろんな子どもがいますから、手違いはいろいろ起こっていますから、無理もないかと思いますが、あの絵をみて君は何か感じたでしょう?」
「確かに・・・。胸が熱くなって、自分みたいだけどそうじゃなくて・・・優しくていい表情で。
少しうれしい感じが・・・。」
「実の母親なんですから当然のことです。
ただね・・・現実の下世話な話になりますが、おじいさんから相続した財産分与について計算しなおしたり、やり直す部分が生じます。」
「あ・・・あなたがお兄さんだから?」
「そうです。まぁ、私はこのとおりの会社経営者ですから、今さらお金がほしいわけではありません。
しかし、あとで税金面などでややこしいことになってもらうのは業務に支障も出ますし困るところです。
だから早急に計算しなおしてもらって、いったん私の取り分をいただいてから、君にまたお渡しするという形をとらせていただきたい。」
「それはかまいませんけど・・・。
すでに寄付したり、保養施設の方で雇ってしまった従業員がいるのですが、そこは何とかそのままにさせていただきたいです。
でないと社員が路頭に迷ってしまうみたいなのは悲しいですから。」
「わかりました。残っている部分も調べさせていただいた上で、従業員になっておられる方の生活は今までどおりでいけるようにしましょう。」
「事情もわかりましたし、用件が片付いたのなら、そろそろ私は家に帰らせていただきますね。
細かいことなどはまた後で電話でお知らせください。」
「おっと・・・用件はまだ終わっていません。
君はこれからここで暮らしてもらうんですから。」
「えっ?どういう意味ですか?
お金のことでしたら、あなたの事情を受け入れると言ってるんですよ。
もう、いただかなくてもいいくらいですし。
とにかく、私には待ってる家族が今はいるんですから、もどらなきゃ。」
(妃孝彦・・・父親から会社を継いだときに会ったことがある。
本社ではなく、自宅に挨拶へいって・・・そして・・・居間に通された・・・。
通される前に孝彦に出会った。
そう、居間で座って会話をしたんじゃない。
居間へ入る前に、同じものを眺めて、彼は言った。
『これは母の肖像画ですが、あったかい表情でしょう。
絶世の美女って感じじゃないんですけど、母は笑顔が最高で優しくて、しっかりしていて僕をびしっと叱ってくれたんです。
叱られたのが初めてだったんですが、涙を浮かべながら僕を必死に愛してくれてるのがわかってね。
僕も母を愛さずにはいられなかったんです。』
こいつマザコンなのかぁ?と思っていたが、彼にとってそれが初恋なのかもしれないな・・・と・・・・!!
そうだ!あの絵の女性・・・妃夫人は郁香に似ている。
そう・・・最近の郁香ときたら、かわいいのはもちろんだけど、大人の色香まで出てきてときどき聖母のような優しさもにじみ出てるよな。
もしや・・・孝彦が郁香に・・・!そう考えれば行先がわかるんじゃないのか?)
その頃、郁香は見るからに高価なベッドと寝具の中で目覚めていた。
起き上がって周りを見回すと、ドアが開いて直登と同じくらいの年齢に見える男が近づいてきた。
「誰?」
「驚かせてしまってすみません。
私は妃孝彦。名前くらいはご存じなのではありませんか?」
「親会社・・・の・・・社長・・・。」
「部下があなたに手荒いことをしてしまったことはお詫びいたします。
だが、私は君にいろいろとききたいことがありましてね。」
「ききたいこと?
こんな出会い方をしなきゃいけない用事なんですか?」
「じゃまが入らないように話すには、こうでもしないとね。
君が花司直登の妻になってしまった今となってはね。」
「どういうこと?」
「君は楢崎徹朗氏の孫っていうのは本当ですか?」
「ええ。おじいさんの秘書の方からいろいろと資料も見せていただきましたし、信じられない部分は私自身で病院にいって再検査も受けました。
それで間違いないと確認もしました。」
「なるほど・・・ウソではないようですね。
では、あらためて紹介させてもらいましょう。
私は君の兄の孝彦です。
私の母は妃唯香といいます。
お疑いなら、この部屋を出て右へ行ってごらんなさい。
母の肖像画があります。」
「私のお母さん・・・!?私の両親は事故でいっしょに亡くなって・・・どういうことなの?」
郁香は肖像画を見て驚いた。
まるで自分が仮装したようにそっくりな女性の絵があったから。
「私に身内が・・・いる?」
「ええ。そうなりますね。私の調べでは亡くなられたとおっしゃるご両親は里親さんだと思います。
まぁ施設ではいろんな子どもがいますから、手違いはいろいろ起こっていますから、無理もないかと思いますが、あの絵をみて君は何か感じたでしょう?」
「確かに・・・。胸が熱くなって、自分みたいだけどそうじゃなくて・・・優しくていい表情で。
少しうれしい感じが・・・。」
「実の母親なんですから当然のことです。
ただね・・・現実の下世話な話になりますが、おじいさんから相続した財産分与について計算しなおしたり、やり直す部分が生じます。」
「あ・・・あなたがお兄さんだから?」
「そうです。まぁ、私はこのとおりの会社経営者ですから、今さらお金がほしいわけではありません。
しかし、あとで税金面などでややこしいことになってもらうのは業務に支障も出ますし困るところです。
だから早急に計算しなおしてもらって、いったん私の取り分をいただいてから、君にまたお渡しするという形をとらせていただきたい。」
「それはかまいませんけど・・・。
すでに寄付したり、保養施設の方で雇ってしまった従業員がいるのですが、そこは何とかそのままにさせていただきたいです。
でないと社員が路頭に迷ってしまうみたいなのは悲しいですから。」
「わかりました。残っている部分も調べさせていただいた上で、従業員になっておられる方の生活は今までどおりでいけるようにしましょう。」
「事情もわかりましたし、用件が片付いたのなら、そろそろ私は家に帰らせていただきますね。
細かいことなどはまた後で電話でお知らせください。」
「おっと・・・用件はまだ終わっていません。
君はこれからここで暮らしてもらうんですから。」
「えっ?どういう意味ですか?
お金のことでしたら、あなたの事情を受け入れると言ってるんですよ。
もう、いただかなくてもいいくらいですし。
とにかく、私には待ってる家族が今はいるんですから、もどらなきゃ。」