普通に輝くOL
直登の不幸?
郁香にとって今回の誘拐事件は花司兄弟とのわだかまりを緩めるいい機会だったともいえた。
いちばん苦手にしていた広登が身内として扱ってくれるようになったこともあるし、彰登と優登にはりめぐらしていた壁もかなり低くなった。
楢妃ハウスは孝彦が逮捕された後、取締役会で選ばれた妃家の遠縁にあたる人物が代表になって経営にあたることになり、楢司は平常通りの営業となった。
ただ、郁香のまわりは少し変化があった。
出勤しても直登と顔を合わせる時間がかなり減っていたからだ。
碓井に直登のことを尋ねても、多忙としか教えてもらえず、同行は碓井か先輩秘書がしているという。
以前ならどこでもというほど郁香を連れていってくれたのに、誘拐事件以降直登は先に出かけてしまったり、車でいっしょに出社してもすぐに碓井と打ち合わせを始めてしまったりして会社で話をするときがない。
帰宅後も郁香が寝る前にもどってきたり、花司家の方に泊まったりで郁香は夜に考え込むことが多くなってしまった。
「私何か・・・直登さんを怒らせるようなことをしたのかしら?
嫌がられるような生活態度してる?わからない・・・。
事件の前までは、いつも楽しく暮らせていたじゃない。
なのに、今はずっと避けられてるとしか思えない・・・。」
もしかして兄弟たちなら何か知っているかもしれないと、藤子に連絡して花司邸へと出向いてみた。
会社を早めに出て、少し買い物をしてから花司邸の勝手口から入って藤子に買ったものを渡す。
「まぁ、たくさん買ってきていただいて助かるわ。
すぐに準備しますから、郁香さんはお茶でも飲んでゆっくりしててください。」
「私も手伝いますって。
ずっと、うちのご飯のお世話までしてもらってたんだもん。
たまに早く帰れたときぐらい、花嫁修業だと思ってがんばらないと!」
「あら・・・そういう事情ならそういっていただければ、準備や今後の計画もたてましたのに。」
「えっ!?」
「だってねぇ。もうそろそろ直登さんとの間にいてもおかしくないものねぇ。うふふ。」
「いてもって・・・?」
「赤ちゃんです。」
「ぶっ!、ぶぶぶーーーーーーーっ!!藤子さぁん!?」
「大人の男女が同棲して、結婚式もあげたのでしょう?
だったら、周りから期待されるのは当たり前じゃないですかぁ。」
「藤子さんは直登さんからきいてないんですか?
私たち、仕事相手の手前・・・結婚式っぽいことはやりましたけど、実際は籍もまだいじってないんですよ。
それに・・・赤ちゃんができるようなことだってしてないし。」
「ウソでしょう?じゃあ、直登さんはお家に帰ってきて何して過ごしてたんです?」
「えっと、テレビ見たり、新聞読んだり、お風呂入ったり、音楽聴いたり、遅い時は食べて寝てる・・・が多いですけどね。」
「そ、そんな・・・あなたたち・・・。」
「だって、私がここを飛び出して本当は私は一人暮らしするはずだったところを直登さんが監視目的でくっついてきただけだもの。
きっと兄として守ってくれる気持ちの方が強かったんじゃないかと。」
「それは嘘ですよ!アレルギーだって郁香さんだけには出ないんですよ。
彼にとって郁香さんは特別な証拠なんですからね。」
「だけど・・・最近はこっちに泊まってることが多いんでしょう?
私それすらもよくわかってなくて・・・。」
「まぁ、それはまるで・・・」
「別居された妻みたいな発言ね。」
「えっ?・・・て小夜さん、帰っておられたんですか?」
「昨日ね、日本にもどってきたのよ。
明日には彼のもとへ出かけることになってるけどね。
聞こえたから言うけど、直にいはあなたに落ち度があればきちんと説明してくれる人よ。
なのに逃げまわってるような態度をとってるということは・・・」
「それは?」
「あなたをとっても意識してるってことよ。
つまり有能な秘書としてでは見られなくなってる。ひとりの女として意識してるの。
その特異な取引先だっけ?そこへの嘘だったとしても、妻とか婚約者とか男の人が紹介するっていうのは勇気がいるわ。
とくに直にいみたいなシャイな男にとってはね。
なのに、結婚式までやっちゃって自分の今後もじっくり考えもせずっておかしいでしょ?
優登や清登が結婚ゴッコをしたいっていうのとは年齢も地位も違うのよ。」
「そんな今になって意識なんてされても・・・そんなのきいたらこっちだって緊張しちゃうじゃないですか。」
「あなたは若いんだもの、たくさんお悩みなさい!ほほほ。
ただ、直にいはあなただけにかまってることはできない立場なの。
そこは理解してあげてよね。」
「理解って・・・?私が身をひくとか遠くにいけばいいんですか?」
「ばっかじゃないの?それじゃ直にいは仕事にもならないわ。
心の問題を言ってるのよ。
重要な仕事ばかりじゃ人間続かないでしょ。
必ず、愛する人を癒してあげなきゃいけないときが来るってことよ。
それまでは、じっくりと見守ってあげることよ。
さびしいのに!とかかまって~~!とかダダッコ言うのはお子様のやることよ。わかった?」
「は・・・はい。私はお子様だといいたいんですね・・・。」
いちばん苦手にしていた広登が身内として扱ってくれるようになったこともあるし、彰登と優登にはりめぐらしていた壁もかなり低くなった。
楢妃ハウスは孝彦が逮捕された後、取締役会で選ばれた妃家の遠縁にあたる人物が代表になって経営にあたることになり、楢司は平常通りの営業となった。
ただ、郁香のまわりは少し変化があった。
出勤しても直登と顔を合わせる時間がかなり減っていたからだ。
碓井に直登のことを尋ねても、多忙としか教えてもらえず、同行は碓井か先輩秘書がしているという。
以前ならどこでもというほど郁香を連れていってくれたのに、誘拐事件以降直登は先に出かけてしまったり、車でいっしょに出社してもすぐに碓井と打ち合わせを始めてしまったりして会社で話をするときがない。
帰宅後も郁香が寝る前にもどってきたり、花司家の方に泊まったりで郁香は夜に考え込むことが多くなってしまった。
「私何か・・・直登さんを怒らせるようなことをしたのかしら?
嫌がられるような生活態度してる?わからない・・・。
事件の前までは、いつも楽しく暮らせていたじゃない。
なのに、今はずっと避けられてるとしか思えない・・・。」
もしかして兄弟たちなら何か知っているかもしれないと、藤子に連絡して花司邸へと出向いてみた。
会社を早めに出て、少し買い物をしてから花司邸の勝手口から入って藤子に買ったものを渡す。
「まぁ、たくさん買ってきていただいて助かるわ。
すぐに準備しますから、郁香さんはお茶でも飲んでゆっくりしててください。」
「私も手伝いますって。
ずっと、うちのご飯のお世話までしてもらってたんだもん。
たまに早く帰れたときぐらい、花嫁修業だと思ってがんばらないと!」
「あら・・・そういう事情ならそういっていただければ、準備や今後の計画もたてましたのに。」
「えっ!?」
「だってねぇ。もうそろそろ直登さんとの間にいてもおかしくないものねぇ。うふふ。」
「いてもって・・・?」
「赤ちゃんです。」
「ぶっ!、ぶぶぶーーーーーーーっ!!藤子さぁん!?」
「大人の男女が同棲して、結婚式もあげたのでしょう?
だったら、周りから期待されるのは当たり前じゃないですかぁ。」
「藤子さんは直登さんからきいてないんですか?
私たち、仕事相手の手前・・・結婚式っぽいことはやりましたけど、実際は籍もまだいじってないんですよ。
それに・・・赤ちゃんができるようなことだってしてないし。」
「ウソでしょう?じゃあ、直登さんはお家に帰ってきて何して過ごしてたんです?」
「えっと、テレビ見たり、新聞読んだり、お風呂入ったり、音楽聴いたり、遅い時は食べて寝てる・・・が多いですけどね。」
「そ、そんな・・・あなたたち・・・。」
「だって、私がここを飛び出して本当は私は一人暮らしするはずだったところを直登さんが監視目的でくっついてきただけだもの。
きっと兄として守ってくれる気持ちの方が強かったんじゃないかと。」
「それは嘘ですよ!アレルギーだって郁香さんだけには出ないんですよ。
彼にとって郁香さんは特別な証拠なんですからね。」
「だけど・・・最近はこっちに泊まってることが多いんでしょう?
私それすらもよくわかってなくて・・・。」
「まぁ、それはまるで・・・」
「別居された妻みたいな発言ね。」
「えっ?・・・て小夜さん、帰っておられたんですか?」
「昨日ね、日本にもどってきたのよ。
明日には彼のもとへ出かけることになってるけどね。
聞こえたから言うけど、直にいはあなたに落ち度があればきちんと説明してくれる人よ。
なのに逃げまわってるような態度をとってるということは・・・」
「それは?」
「あなたをとっても意識してるってことよ。
つまり有能な秘書としてでは見られなくなってる。ひとりの女として意識してるの。
その特異な取引先だっけ?そこへの嘘だったとしても、妻とか婚約者とか男の人が紹介するっていうのは勇気がいるわ。
とくに直にいみたいなシャイな男にとってはね。
なのに、結婚式までやっちゃって自分の今後もじっくり考えもせずっておかしいでしょ?
優登や清登が結婚ゴッコをしたいっていうのとは年齢も地位も違うのよ。」
「そんな今になって意識なんてされても・・・そんなのきいたらこっちだって緊張しちゃうじゃないですか。」
「あなたは若いんだもの、たくさんお悩みなさい!ほほほ。
ただ、直にいはあなただけにかまってることはできない立場なの。
そこは理解してあげてよね。」
「理解って・・・?私が身をひくとか遠くにいけばいいんですか?」
「ばっかじゃないの?それじゃ直にいは仕事にもならないわ。
心の問題を言ってるのよ。
重要な仕事ばかりじゃ人間続かないでしょ。
必ず、愛する人を癒してあげなきゃいけないときが来るってことよ。
それまでは、じっくりと見守ってあげることよ。
さびしいのに!とかかまって~~!とかダダッコ言うのはお子様のやることよ。わかった?」
「は・・・はい。私はお子様だといいたいんですね・・・。」