普通に輝くOL
小夜に言われ放題に言われて、言葉少なく藤子の夕飯の支度の手伝いをしていると・・・リビングから直登の声がした。
(もどってきたんだわ。)
そっとリビングに近づくと、兄弟たちの会話がきこえてきて。
「直にい、またこっちで食べていくのか?
いったいどうしたんだ?郁香とけんかしたのか?」
「清登あのなぁ・・・こっちで食べたらどうしてそうなるんだ?」
「だってさあ、俺たちが止めても郁香にくっついていって同棲までがんばった直にいがだよ。
その大切な郁香をほったらかしにする時間ばかり作ってるって気になるだろ。
郁香泣いてるかもしれないじゃないか。
昨日だって、店の前を歩いてるとこみたけどつらそうな顔してたぞ。
直にいがこっちにずっときてるなら、俺が郁香と夕飯食べに行こうかと思ってるくらいさ。」
「ほお、郁香ひとりなんだ・・・。
じゃ、俺もそろそろ乗り込んで夕飯いっしょにしようかな?」
「なっ・・・彰登まで・・・?おまえあきらめたんじゃなかったのか?」
「誰がそんなことをいったんだ?
籍だって入れてないんだろ。だったら郁香はフリーじゃないか。
それとも毎晩かわいがってたのか?
一晩くらいなら、俺は気にしない男だからな。」
「彰登がそういうなら俺もだ。
秘書課でひとり浮いてるなら、元の部署か総務に郁香をくれよ。
そしたらまたいっしょに食堂へ行けるのに。」
「優登・・・おまえまで!あのなぁ。」
「直にいが郁香に冷たいからだろ!フリーになりたいなら、はっきりしてやらないと不公平だっていってるの!」
「違うんだ・・・。僕はフリーになりたいんじゃない。
その逆だ。」
「逆って・・・結婚するってことか?もうやっただろ。
書類を提出してなかっただけでさ。
役所に行けばすむことじゃないか。
郁香が書いてくれたってことは了承してるってことじゃないの。
もちろん、そうなると俺たちは万事休すだけどな。」
「書類はそうなんだ。問題ないと思う。
問題なのは・・・僕の体なんだ。」
「体?郁香だけがアレルギー症状が出ないのは郁香が特別だからだってやつ?」
「そうなんだ。特別だから出なかったはずなんだ。」
「はずってなんだよ・・・もしかして・・・直にい、もしかして郁香に触れるとアレルギー症状が出たのか?」
「ああ、事件のあとよかったよかったって抱きしめてやりたかったのに・・・指が触れそうになったら体の奥がむず痒くなって、まさかと思ってトイレで鏡を見たら思いっきり発疹が胸に出てた。
どうしたことかわからない!
僕は彼女に対しての愛情が薄くなってしまったのか?
無事だったことにすごくうれしかったし、いっしょに役所に行きたいと思ってた。
抱きしめたいと思ったし、清登としゃべってる姿がとてもかわいいと思った。
なのに、どうして・・・今さら僕の体は彼女を拒絶してしまったんだ!」
「そうか・・・だから逃げてきたんだな。
そういえば広登の嫁の詩織さんに対しても広登との結婚を知ってから出たよな。
あれは、あきらめたからだったんだろう?」
「あきらめたというか、誤解だ。
詩織さんは僕に何かと話しかけてきてたけど、僕は彼女と話すときは威厳を保っていないとしゃべれない状況だったし、広登が彼女を意識してるとわかった時点でホッとしたくらいだった。
あ、詩織さんはべつにいいんだ。問題は郁香となんだ。
郁香をあきらめるなんてできない。
そばにいたいけど・・・このままじゃ、だめになるのを待つだけだよな。」
「正直に話せばいいだろう。」
「彰登、おまえはその方がチャンスだからそんな・・・」
「俺がそんなケチな望みを持つ男だと思ってるのか?
問題は兄貴の気持ちだろ!
体の都合は弱ったことだけど、逃げ回るよりかは事情を分かってもらう方が先だと思う。
あとは郁香の判断を仰ぐしかあるまい。」
「俺もそう思う。俺の知ってる郁香は真剣に悩んでる男を攻撃するようなことは絶対言わないよ。」
「優登も・・・おまえたちありがとな。
僕も郁香はひどいことはいわないと思う。
でもな、それが逆につらくなる。
彼女の優しさや誠実さが僕にとってはとてもつらくなる。
いい娘だ、かわいいな、抱きしめたいって思っても手も足もでない。
そしたら僕はつらい顔をするに違いない。
それを見た郁香は平気でいてくれるかな?」
「直にい・・・。」
「あいつは隠れて泣くだろうな・・・。」
「だから僕は、困ってる。
いっそ、これから別れを切り出しておいた方がいいんじゃないかとね。」
直登がそう言った途端、郁香は直登の前に飛び出していた。
「まだ、別れないで!口をきいてくれなくても、逃げ回っても、別居ででもいいから、別れるとかさよならとか言わないで!
だって、だって・・・急に出てきた症状なんでしょ?
だったら治療する方法が見つかるかもしれないじゃない。
触れなきゃいいんだから、離れて楽しい話をするだけでもいい。
アレルギーが出ない人が現れたら私が気を利かせて去っていくんじゃだめなの?」
(もどってきたんだわ。)
そっとリビングに近づくと、兄弟たちの会話がきこえてきて。
「直にい、またこっちで食べていくのか?
いったいどうしたんだ?郁香とけんかしたのか?」
「清登あのなぁ・・・こっちで食べたらどうしてそうなるんだ?」
「だってさあ、俺たちが止めても郁香にくっついていって同棲までがんばった直にいがだよ。
その大切な郁香をほったらかしにする時間ばかり作ってるって気になるだろ。
郁香泣いてるかもしれないじゃないか。
昨日だって、店の前を歩いてるとこみたけどつらそうな顔してたぞ。
直にいがこっちにずっときてるなら、俺が郁香と夕飯食べに行こうかと思ってるくらいさ。」
「ほお、郁香ひとりなんだ・・・。
じゃ、俺もそろそろ乗り込んで夕飯いっしょにしようかな?」
「なっ・・・彰登まで・・・?おまえあきらめたんじゃなかったのか?」
「誰がそんなことをいったんだ?
籍だって入れてないんだろ。だったら郁香はフリーじゃないか。
それとも毎晩かわいがってたのか?
一晩くらいなら、俺は気にしない男だからな。」
「彰登がそういうなら俺もだ。
秘書課でひとり浮いてるなら、元の部署か総務に郁香をくれよ。
そしたらまたいっしょに食堂へ行けるのに。」
「優登・・・おまえまで!あのなぁ。」
「直にいが郁香に冷たいからだろ!フリーになりたいなら、はっきりしてやらないと不公平だっていってるの!」
「違うんだ・・・。僕はフリーになりたいんじゃない。
その逆だ。」
「逆って・・・結婚するってことか?もうやっただろ。
書類を提出してなかっただけでさ。
役所に行けばすむことじゃないか。
郁香が書いてくれたってことは了承してるってことじゃないの。
もちろん、そうなると俺たちは万事休すだけどな。」
「書類はそうなんだ。問題ないと思う。
問題なのは・・・僕の体なんだ。」
「体?郁香だけがアレルギー症状が出ないのは郁香が特別だからだってやつ?」
「そうなんだ。特別だから出なかったはずなんだ。」
「はずってなんだよ・・・もしかして・・・直にい、もしかして郁香に触れるとアレルギー症状が出たのか?」
「ああ、事件のあとよかったよかったって抱きしめてやりたかったのに・・・指が触れそうになったら体の奥がむず痒くなって、まさかと思ってトイレで鏡を見たら思いっきり発疹が胸に出てた。
どうしたことかわからない!
僕は彼女に対しての愛情が薄くなってしまったのか?
無事だったことにすごくうれしかったし、いっしょに役所に行きたいと思ってた。
抱きしめたいと思ったし、清登としゃべってる姿がとてもかわいいと思った。
なのに、どうして・・・今さら僕の体は彼女を拒絶してしまったんだ!」
「そうか・・・だから逃げてきたんだな。
そういえば広登の嫁の詩織さんに対しても広登との結婚を知ってから出たよな。
あれは、あきらめたからだったんだろう?」
「あきらめたというか、誤解だ。
詩織さんは僕に何かと話しかけてきてたけど、僕は彼女と話すときは威厳を保っていないとしゃべれない状況だったし、広登が彼女を意識してるとわかった時点でホッとしたくらいだった。
あ、詩織さんはべつにいいんだ。問題は郁香となんだ。
郁香をあきらめるなんてできない。
そばにいたいけど・・・このままじゃ、だめになるのを待つだけだよな。」
「正直に話せばいいだろう。」
「彰登、おまえはその方がチャンスだからそんな・・・」
「俺がそんなケチな望みを持つ男だと思ってるのか?
問題は兄貴の気持ちだろ!
体の都合は弱ったことだけど、逃げ回るよりかは事情を分かってもらう方が先だと思う。
あとは郁香の判断を仰ぐしかあるまい。」
「俺もそう思う。俺の知ってる郁香は真剣に悩んでる男を攻撃するようなことは絶対言わないよ。」
「優登も・・・おまえたちありがとな。
僕も郁香はひどいことはいわないと思う。
でもな、それが逆につらくなる。
彼女の優しさや誠実さが僕にとってはとてもつらくなる。
いい娘だ、かわいいな、抱きしめたいって思っても手も足もでない。
そしたら僕はつらい顔をするに違いない。
それを見た郁香は平気でいてくれるかな?」
「直にい・・・。」
「あいつは隠れて泣くだろうな・・・。」
「だから僕は、困ってる。
いっそ、これから別れを切り出しておいた方がいいんじゃないかとね。」
直登がそう言った途端、郁香は直登の前に飛び出していた。
「まだ、別れないで!口をきいてくれなくても、逃げ回っても、別居ででもいいから、別れるとかさよならとか言わないで!
だって、だって・・・急に出てきた症状なんでしょ?
だったら治療する方法が見つかるかもしれないじゃない。
触れなきゃいいんだから、離れて楽しい話をするだけでもいい。
アレルギーが出ない人が現れたら私が気を利かせて去っていくんじゃだめなの?」