普通に輝くOL
郁香はクスクス笑いだした。
長月の感受性は普通の男とは別のものだったことを忘れていた・・・と後悔したほどに。
「引っ越しを考えているんです。」
「引っ越し?あなたは家を複数持っておられるとききましたけど。」
「財産部分は現在住んでいる人たちのものなの。」
「今住んでおられるところは、何か不都合でも?」
「社長の奥様が引っ越してきて、新居になるんです。」
「ちょ、ちょっと・・・話がえ~とみえませんよ。
社長って直登氏ですよね。
で、社長夫人って・・・あなたじゃなかったんですか?」
「あ、それは単なるセレモニーです。
直登さんはその後、かの有名なアレルギー症状がなくなったので、先週お見合いを連続で済ませたんです。」
「連続・・・って!?す、すごいですね。それで気に入った方がおられたのかな?」
「たぶん・・・。」
「あなたもその中に入ってたんですか?」
「いいえ。私にはその資格がないの。
私が近づくとアレルギーが出てしまうようになって。」
「確か以前は、あなただけがアレルギー症状が出ないって聞きましたけど・・・。」
「そう。だから同居してたけど・・・もうダメなの。
同じ家にいて、近づかないように生きていくってつらいと思わない?」
「そうですね。それが好きな人だったらなおさらですね。」
「でしょ。だから、そろそろ私もお家探しをってね。
でも、1か所に留まれるか不安だから、とりあえず賃貸がいいかなって思うの。」
「ああ、なるほど。
それで、僕の手がけた内装のところを探してるわけですね。
ってことは、僕のデザインが気にいってもらっているということだと理解していいですか?」
「ええ。すごく落ち着くもの。
キルトの模様なんかも、ワインカラーとか深みのある茶色なんかもね。
そのものは重厚な感じすらするけど、かわいいものがすごく引きたつし。
雑草を積んできても、とてもかわいらしいわ。」
「そこまで試してもらっていたんですか!
それはうれしいなぁ。
じゃ、そうですね・・・住まいの希望場所を教えてもらえますか?
希望がなければ通勤圏内くらいの範囲でいいかな?」
「ええ。そうしてもらえるとありがたいです。」
「じゃ、あなたにとても喜んでもらえそうな部屋があるんですよ。
今度はそちらへ行ってみましょう。」
長月が郁香を連れて行ったのは合計15戸という小さ目のマンション。
「全体はこじんまりなんですがね、このマンションには近所の芸大の学生限定で貸しているんです。
部屋に防音装置がついています。
ピアノの練習やパーカッション、モニュメント製作などで音がね・・・。」
「それは喜びそうですね。
でも・・・私は学生じゃありません。だめですね。」
「大丈夫です。家主が快く貸してくれるはずですから。」
「えっ?長月さんは家主さんと親密なんですか?」
「ふふふっ・・・はい。もうすでにこのお部屋を売り込みにきていますよ。」
「売り込みって・・・えっ!長月さんがここの家主さんなんですか?」
「はい。すべてが僕の自信作です。とくにここはね。
なにせ、僕の隣の部屋ですし。」
「長月さんもお住まいだったんですか?」
郁香はいったん外に出て隣の部屋の表札を見た。
「ほんと・・・長月さんのおたくですね・・・。」
「ぷっ!あはははは。わざわざ確認しにいかなくても。そういってるのに。
ついでに説明しますと、このどの部屋にも同じデザインの部屋はありません。
このマンションすべてが僕の大きなキャンバスで、これを分割したそれぞれが僕のいろんな心の世界を描いたもの。・・・というわけです。」
「ステキですねぇ・・・。
女性用のマンションをとくに手がけなくても、ここですでに成功しておられたわけですね。」
「ん~~~~ここは成功っていえるのかどうか。
あまりに僕の世界観を追求しすぎているっていうか、一般ウケはしないんです。
とくに3階の2部屋はね。」
「その2部屋はどうして?」
「別名オカルトハウスって言われてしまってね。
そっち方面に興味がある人じゃないと、怖いって言われるんです。
まぁ、ラッキーなことに、学生の中にそういうのが好きな人がいて借りてくれてますけどね。」
「へえ、怖い物見たさでたずねていってみようかしら。
だけど、この部屋はどっちかというとメルヘンに近いかも・・・」
「そうかもしれませんね。花を添えると映えるように工夫しましたから。
で・・・どうしますか。
気に入ってもらえたら、契約といこうと思うんですけど・・・1日考えますか?」
「そうですね、一晩だけいいですか?」
「ええ、かまいませんよ。ところで、あなたの引っ越しを花司家の誰かに相談しましたか?」
「いえ・・・それが何か?」
「あの兄弟はみんなあなたをとても気に入っておられるみたいだから、ここに住むなんてわかったらどうなるかな・・・と思って。」
「ご迷惑はかけません。もしかしたら会社も辞めるかもしれないし・・・。」
長月の感受性は普通の男とは別のものだったことを忘れていた・・・と後悔したほどに。
「引っ越しを考えているんです。」
「引っ越し?あなたは家を複数持っておられるとききましたけど。」
「財産部分は現在住んでいる人たちのものなの。」
「今住んでおられるところは、何か不都合でも?」
「社長の奥様が引っ越してきて、新居になるんです。」
「ちょ、ちょっと・・・話がえ~とみえませんよ。
社長って直登氏ですよね。
で、社長夫人って・・・あなたじゃなかったんですか?」
「あ、それは単なるセレモニーです。
直登さんはその後、かの有名なアレルギー症状がなくなったので、先週お見合いを連続で済ませたんです。」
「連続・・・って!?す、すごいですね。それで気に入った方がおられたのかな?」
「たぶん・・・。」
「あなたもその中に入ってたんですか?」
「いいえ。私にはその資格がないの。
私が近づくとアレルギーが出てしまうようになって。」
「確か以前は、あなただけがアレルギー症状が出ないって聞きましたけど・・・。」
「そう。だから同居してたけど・・・もうダメなの。
同じ家にいて、近づかないように生きていくってつらいと思わない?」
「そうですね。それが好きな人だったらなおさらですね。」
「でしょ。だから、そろそろ私もお家探しをってね。
でも、1か所に留まれるか不安だから、とりあえず賃貸がいいかなって思うの。」
「ああ、なるほど。
それで、僕の手がけた内装のところを探してるわけですね。
ってことは、僕のデザインが気にいってもらっているということだと理解していいですか?」
「ええ。すごく落ち着くもの。
キルトの模様なんかも、ワインカラーとか深みのある茶色なんかもね。
そのものは重厚な感じすらするけど、かわいいものがすごく引きたつし。
雑草を積んできても、とてもかわいらしいわ。」
「そこまで試してもらっていたんですか!
それはうれしいなぁ。
じゃ、そうですね・・・住まいの希望場所を教えてもらえますか?
希望がなければ通勤圏内くらいの範囲でいいかな?」
「ええ。そうしてもらえるとありがたいです。」
「じゃ、あなたにとても喜んでもらえそうな部屋があるんですよ。
今度はそちらへ行ってみましょう。」
長月が郁香を連れて行ったのは合計15戸という小さ目のマンション。
「全体はこじんまりなんですがね、このマンションには近所の芸大の学生限定で貸しているんです。
部屋に防音装置がついています。
ピアノの練習やパーカッション、モニュメント製作などで音がね・・・。」
「それは喜びそうですね。
でも・・・私は学生じゃありません。だめですね。」
「大丈夫です。家主が快く貸してくれるはずですから。」
「えっ?長月さんは家主さんと親密なんですか?」
「ふふふっ・・・はい。もうすでにこのお部屋を売り込みにきていますよ。」
「売り込みって・・・えっ!長月さんがここの家主さんなんですか?」
「はい。すべてが僕の自信作です。とくにここはね。
なにせ、僕の隣の部屋ですし。」
「長月さんもお住まいだったんですか?」
郁香はいったん外に出て隣の部屋の表札を見た。
「ほんと・・・長月さんのおたくですね・・・。」
「ぷっ!あはははは。わざわざ確認しにいかなくても。そういってるのに。
ついでに説明しますと、このどの部屋にも同じデザインの部屋はありません。
このマンションすべてが僕の大きなキャンバスで、これを分割したそれぞれが僕のいろんな心の世界を描いたもの。・・・というわけです。」
「ステキですねぇ・・・。
女性用のマンションをとくに手がけなくても、ここですでに成功しておられたわけですね。」
「ん~~~~ここは成功っていえるのかどうか。
あまりに僕の世界観を追求しすぎているっていうか、一般ウケはしないんです。
とくに3階の2部屋はね。」
「その2部屋はどうして?」
「別名オカルトハウスって言われてしまってね。
そっち方面に興味がある人じゃないと、怖いって言われるんです。
まぁ、ラッキーなことに、学生の中にそういうのが好きな人がいて借りてくれてますけどね。」
「へえ、怖い物見たさでたずねていってみようかしら。
だけど、この部屋はどっちかというとメルヘンに近いかも・・・」
「そうかもしれませんね。花を添えると映えるように工夫しましたから。
で・・・どうしますか。
気に入ってもらえたら、契約といこうと思うんですけど・・・1日考えますか?」
「そうですね、一晩だけいいですか?」
「ええ、かまいませんよ。ところで、あなたの引っ越しを花司家の誰かに相談しましたか?」
「いえ・・・それが何か?」
「あの兄弟はみんなあなたをとても気に入っておられるみたいだから、ここに住むなんてわかったらどうなるかな・・・と思って。」
「ご迷惑はかけません。もしかしたら会社も辞めるかもしれないし・・・。」