普通に輝くOL
結局、直登は自分だけが蚊帳の外状態だったことを知らされる結末に驚くしかなかった。

だが、郁香と新しい仕事でいっしょに努力していけることは心底うれしいと思った。



足早に帰宅して郁香に広登と碓井の策略の話をすると、郁香はクスクス笑いながら


「私も話をきいたときは、もうびっくりなのと面白いって思った!
さすが碓井さんよね。天才だわ。」


「今回はほんとに2人にやられたよ。
まさか清登を見合のフォローに行かせるなんてな。
でも、大丈夫なのかなぁ。」


「それは心配ないわ。
清登クンから電話があってきいたけど、清登クンもお付き合いしたいって思うかわいい娘さんなんですって。
清登クンはけっこう面倒見がいいから、好かれたんだと思う。」


「だが、問題は優登だ・・・。あいつが見合いでいい方向にいったとしても時期社長なんてなぁ。
総務で言われたことだけやってたあいつがなぁ・・・できるんだろうか?」


「それも問題ないわ。優登もお付き合いはしてみるっていってたし、総務は嫌がってたから、配置換えを望んでいたのよ。
そこを広登さんが、社長室をすすめたんだもの。完璧よ。」


「広登がいればイヤでも勉強させられるか・・・。
生ぬるい生活から抜け出せていいってことかな。

で・・・僕はちゃんと雇ってもらえるんでしょうか?代表。」


「そうねぇ・・・どうしようかしら。
私に触れることもできないんじゃ、私の命令が正しく伝わるかどうか・・・不安ね。」


「郁香!僕の真意は見せただろう?
よし、もっと見せないといけないって言いたいんだな。

うぉーーーおおおおお!」


「きゃあ!!!な、直登さぁ・・・ん?」


直登は郁香をベッドに押し倒して抱きしめていた。


「ちょ、ちょっと・・・直登さん。早く離れないと!!!
また、大変なことになっちゃうわ。」


「嫌だ。君に雇ってもらえなきゃ、僕は生きていけない。
頼みます。僕を雇ってください!・・・・・あれ?」


「雇うし、雇うって形だって財産的な見せかけだけなんだから、そんなことしなくても!
ねえ、きいてる?どうしたの。」


「あ、うん・・・どうやら治ったみたいだ。
体中熱っぽくならないし、痒くもない。
なぜだ・・・どうして?

もう理由なんかどうでもいい。
現時点が初夜ってことで、いいね。奥さん。」


「えっ!・・・う、うん。あ、はい・・・。」


直登の頭の中にはラッキーと思った部分といつまた湿疹が出てしまうかわからないという部分が入り乱れていた。


「ごめん、説明しにくいけどずっとおあずけ状態だったせいと、今の幸運のおかげとでがっついてるよな。
優しくないって朝から怒らないでくれるか?」


「ぷっ・・・変な謝罪ね。
直登さんが謝ったら、私も何にも知らない罪を謝らなくちゃならないじゃない。」


「それは罪じゃないよ。
それも僕には幸運だ。それも仕事同様2人で努力して開発していくか?」


「や、やだ、もう・・・。う・・・。」


「おしゃべりの続きは明日に。」


その言葉の後から直登は数多くのキスの雨を郁香に降り注いでいった。

郁香は以前、直登と夜を過ごしたときより幸せを感じていた。

前は初めてなことに直登がかなり気を遣ってくれていたのを感じた分、なんとかついていかなくては!と使命感みたいな気持ちがあった。

しかし、今回は郁香だけが拒絶されていたと思っていた矢先のことで、直登が不安な気持ちを振り払うようにひたすら必死に郁香を求めてくれるのがうれしいと思った。


「写真の君は俺のものだよ・・・じいさん。」


「何か言った?」


「ん?何もいうわけない・・・ふふっ」


外が白々と明けてくるまで2人は激しく求めあっていたが、直登のアレルギー症状は出て来なかった。

そしてその後もピタリと症状は出なくなった。

それはどの女性に対してももう症状が出ることはなかった。




それから3か月後、元の楢司邸、現在の花司邸には優登の彼女と清登の彼女も招いてのバーベキューパーティーが行なわれた。


「なんで俺だけが未だにフリーを貫いていかなきゃならないんだよ。
女にモテるのは俺が一番なのにさ。」


「そういう態度が本命を寄せ付けないんです。」


「ちぇっ、広にいに俺を批評してほしくないな。
2人目がまた生まれるって自慢気にやってきてさ・・・。」


「そりゃ、我が子だから自慢くらいするよ。
それにもうひとり・・・初めての出産を控えて大騒ぎしてる兄がいますからね。」


「いちばん人騒がせな兄貴がな・・・で、どうしてあの病気が治っちまったんだ?」


「責任ストレスだよ。
俺たち兄弟と郁香、そして会社の社員のこと。
まとわりついてくる女との関係・・・どれもストレスだったってこと。

それだけ社長ってのは重い鎧をつけてたってことだな。
だが、俺がそれをもらってしまったし、郁香を嫁にもらったから金目当ての女が寄ってくることもないし、
代表は郁香の会社で奴隷のように働けば、ヤツはMになってよろこんでいられるわけだ。」


「優登・・・そこまで言ったら直にいに失礼だよ。
俺は直にいにはいつも感謝してるし、頭があがんないよ。
直にいが見合いしたおかげで、かわいい彼女もできたしね。

それに郁香の笑顔は直にいに向けられて当然なんだよ。」


「なんだ?その言いぐさは・・・清登、そこまでいう理由はなんだ?」


「あれ、みんな知らなかったの??
直にいは、徹朗じいさんの命令で郁香のことを調べてただろう?

俺は直にいの部屋にテニスラケットを借りにいったときに見たんだけど、ものすごい量の郁香の写真を段ボール箱に入れてたんだよ。」


「マジか・・・それマジかよ。」


「本物の郁香と会う前から直にいは写真の郁香に萌えてたんだって!あははは。
尻に敷かれてあんなにうれしそうだろ。」


「し、知らなかった・・・。俺たち嫉妬されてたんだな。」


「よし、じゃ俺も誰かひとりに萌えることにしよう。」


「彰登はプレイボーイ癖が治らないから無理無理ぃ~~~!」


「こらっ、清登!!!」

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