普通に輝くOL
2人の彰登
郁香は会社名とおじいさんの説明からし始めて、花司家との関係を話し、社長の直登の命令で花司家から通勤することになったことを話した。

(いずれすぐにバレることだもん、正確にばらまいておいた方が誤解されずに済むはずだわ。)


「はぁ・・・それで社長命令で彰登さんに送ってもらったということね。
すごいことになったわねぇ。

花司家ってお屋敷でしょ。アパートから豪邸に住むってどんな感じ?」


「そりゃ・・・感動したし、落ち着かないし、お客様みたいな気分だし、だいたい・・・社長から監視されてるみたいなものだし・・・。緊張はするよ。」


「ああ~そっか・・・それはしんどいわね。
相手は就職先の社長で、本来プライベートな時間をずっと顔を突き合わすなんて・・・それじゃこの部署で残業するよりも疲れそうだわ!」


「まぁね。でも、ご心配なく・・・社長は親切だし優しいので、自分の部屋では好きにしてるし、会社でも今までと変わらないわ。」


「でも・・・毎日のお送りとお迎えなんて・・・いいなぁ。
彰登さんはもちろん、総務の優登さんも彰登さんの弟だよね。

あ~~既婚者の広登さんもお兄さんだよね。
同じ会社にかっこいい男兄弟がいるってすごいなぁ。」



「まぁアパートからお屋敷の間借りって感じになっただけだから、みんなが思うようなシンデレラストーリーはぜんぜんないから安心して。」



「そうなの・・・つまんなーーーい!」


「もう!あんたたちは、私をつついて楽しんでるだけでしょ。」


「そうかも。あはははは・・・」


同じ部署の仲間たちは、楢崎徹朗のことも花司家の関係もとくに気にとめることもなく、ふだんと変わらずの扱いで仕事をしていることで、郁香は安堵した。


(やっぱり、ありのままに話して正解だったみたい。
でも・・・送ってくれたのは彰登さんじゃなくて社長の直登さんだっていうのは言わなくてもいいわよね。
社長だって彰登さんのフリを自分でしたんだもの。)



そんなスタートだったが午前中の仕事をこなし、郁香はいつものように社員食堂へと出向いた。


「え~と今日の日替わり定食は~・・・あっ、オムライス付きってやったわ、ラッキー」


そんなことをつぶやきながら、あいてる席に座ると、すぐあとから同じ定食を持ってきた優登が郁香の向かいに座った。


「おぉ!午前ちゅ、お疲れぇ~」


「あっ、優登も同じやつにしたの?やだなぁ・・・」


「何いってんだ!俺が何を食べようが勝手だろうが。それとまったく同じじゃないぞ、ゴハン大盛りだ!」


「あははバカ!私はね、あんたが和食の方を頼んでくれたら、適度に交換して両方の味見ができたんじゃないか~~~って思ったのよ!
その方があんただって2度おいしいでしょ。」


「あ・・・なるほどな。確かにそれ両方が楽しめるな。」


「でしょう~!だったらもう1コ和食の方頼んできてくれる?」


「なんで、俺がそこまでしなきゃならないんだよ!
おまえが食べたいなら、おまえが買ってこいよ。」



「もう、ケチ!」


「和食も食べてみるか?」


「えっ!?」


「あ、あああ、兄貴・・・おい・・・いいのか、こんなとこに来て。」


優登と郁香は彰登もどきの直登が食堂にきているのに驚いた。



「だ、大丈夫なんですかぁ!!社長室で大騒ぎになってたりして。」


「君の嫌いな碓井には言ってきたけど・・・。
それにしても、2人はいつもそんなに楽しそうにランチしてるのか?」



「楽しそうに・・・って。なんつーか、なんで、彰にいのフリしてまでここに来たんだよ。」


「いや、碓井からきいたんだけど、朝のことで広報じゃ騒がれてしまったとかで・・・すまないと思って。」


「いや、違うな・・・兄貴はそんなことくらいではビクともしないはずだ。
さては・・・俺と郁香に割り込むつもりで来ただろ。」


「そ、そんなことはない。じゃまだったら食べたらすぐ部屋にもどるし・・・。」


「じゃまじゃないですよ。
直登さんが心配症なのはよくわかりましたし、和食食べたかったし・・・交換しませんか?えへへ」


「いいよ。僕も人気のオムライスの味見したかったし、好きなおかずとってかまわないよ。」


「やったぁ!お兄さまは話がわかる。うふふ。」


「郁香はまだ色気より食い気なのもよくわかったよ。ははっ。」


「うん、俺もそう思う。おまえ食い気すげぇ~」


「もう!優登のバァ~~~~カ!」


食事を済ませると、3人はそれぞれの部署へともどっていった。
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