ゆびきり
いつものように職員出口からでると、女の子がうずくまって座っていた。その娘は私の存在に気付き、顔をあげた。


「梨由!」


「お疲れ様。寒い~、時間ある?」


梨由は震えながらたちあがり、唇の色も青ざめていた。



「いつからそこにいたの?そりゃ真冬にそんなとこいたら寒いよ」



私の心配をよそに、梨由は笑顔で梨由はポケットから車のキーをとりだした。



「送ってあげる」



「いいの?ありがとう」



私は梨由の車に乗り込んだ。梨由の車は意外にも、普通の日本車で女の子らしい車だった。



「可菜ちゃんは?」


「家よ。今日は旦那の家にいく日なの」


「別々に済んでるの?旦那さんと仲よくないんだ?」


「まあね、好きな人他にいるし、でもまあ子供いるなら結婚してもおかしくないし…誰の子とか関係なしで…」



梨由は真剣な顔をしていた。


「旦那さんの子じゃないの?」


「ない確率のが高いの。旦那もそれを知ってる。彼は私の父の権力がほしかったんだし、まあいいかって」


「仮面夫婦っていうやつ?」



梨由はうなづいた。



「まあ、こんな話しはいいじゃん」



笑顔で話しを変える梨由、過去の傷が無邪気な彼女を縛りつけているのだろう。

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