ゆびきり
私はようやく、彼が書いてくれた詩を開いてみた。



〜人ゴミに流されたって何も得るものはない

どんな似てる人が歩いていても

ここには君はいない

自分は誰かにはなれないから

自分をちゃんと見つめよう〜



詠士の詩は梨由の詩とは全く別物だった。


梨由は私への手紙のような詩に対し、詠士は私の中のもう一人の自分に言われているような詩だった。


でも、どちらも私と会ったあの短時間でこの詩を書いた。


私の心をあの短時間でどうやって見抜いたのだろう?


それとも、私は他の人からも解りやすい人間なのかな?


なんかそれも違う。


「詠士…」


私は無意識に彼の名を呼んだ。

そして、絡めあった左の小指を見つめた。


もっと、繋いでいたかったな。

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