ゆびきり
そうだ、あんな冷たい態度されて、傷つけられてるのに、まだ彼のこと好きだから、あの彼の姿を偽りだと思いたかった。


「ねぇ、梨由。私はあの人にちゃんと愛されてたのかなぁ。あの優しさも、私を優しく触る手も嘘だったのかな?」


梨由に尋ねたって、答えを知ってるわけじゃない。

でも、なにか答えが欲しかった。

気休めでもいいから、安心がほしい。

「よし、日和にお手紙書いてあげる!ちょっとまってね」

梨由は、鞄の中から下敷きと便箋をとりだし、カラーペンで書き始めた。


真剣な表情で書いてくれる梨由は、私のことを考えながら書いてくれているのが伝わってくる。


それだけでも、私の心が少し楽になった。


「梨由は、恋してる?」


私は真剣に手紙という詩を書いている梨由にさりげなく聞いた。


「してたよ。でも、もう届かないの」


梨由は口元は笑っていたが、目は哀しそうにみえた。
< 6 / 146 >

この作品をシェア

pagetop