「カレシマチ」
「あれ・・・今日は・・・」いつもより車内は空いていた。
見渡せばカップルも多い。今年はクリスマスイブが金曜日に当たってて
前倒しで休む人も多いもので・・・
「くぅ~・・・私も・・・したいなぁ・・・デート」
でも、そんなこと言ってられない。仕事だってあるし、なんせヒマリと過ごす大事な日だったから。
「あ・・・そうそう、今日はケーキを取りに行くんだった。」
帰りにクリスマスケーキをピックアップする。
子供にとってのクリスマスは特別。
「絶対ケーキはないとね!」会社の帰り道にある
割に有名なケーキ屋さんで予約していた。
「朝からスゴイな・・・」会社の最寄駅に降りるなりクリスマスモード一色。
なんか、クリスマスソングを聞くだけで、ワクワクする。
「いいね~今年も・・・」
そんな余韻に浸っていると
「穂香さん~」黒コートにヒール高めの女子が駆け寄ってきた。
「あれ?どうしたの・・・その恰好?」
同僚の千咲(34歳)タメ☆・・・だった。
「何?今日休み取ったの?」
「うーーん・・・実はね。取った。」
「えーー。なんでよー。」
「彼とこれからデートなんだ。」
「今はナント・・、彼氏待ちよ。」
ちーちゃん・・・
同じ年で千咲は既婚で子供だって旦那だって・・・何不自由ない幸せ者なのにィ・・・
「誰とよ・・・ねえ・・・」
「今度ゆっくりね。」
ちーちゃん・・・泣
千咲はキメキメな女子で私の前に立っていた。
黒いコートの中からチラッと見える
ピンクのワンピースは可愛らしかった。
とてもミセスには見えない
「すんごい綺麗だよ。ちーちゃん・・・」
私は、通勤電車でやんわり汗だくな自分が本当に恥ずかしくって・・・
振り乱した髪の毛を指で整えた。
「こんな日に会うなんて偶然・・・てか・・・なんで会社の近く?」
「だって・・・もうすぐ彼・・・仕事終わるからね。」
「え・・・」
千咲ってばいつの間にか同じ会社の警備員の男と付き合っていた。
彼は夜勤で、もうすぐ仕事上がりだという。
「全然・・・気が付かなかったや・・・私。」
「じゃあ。穂香。あんたもがんばってよね。」
「う・・・うん。」
「メリークリスマス」
「・・・・は・・・ハイ・・・」
千咲は足早に私の前を去って行った。
「もう・・・彼氏って・・・」
「いいな・・・なんか・・・」
この慌ただしい朝の一瞬の出来事。
ちょっと魔法がかかったみたいなそんな瞬間だった。
「始業時間まであと・・・」
「ひゃー。急がなきゃ!!」
穂香は授業員入口へ駆け込んだ。