「カレシマチ」
シングル
「ママ・・・行こう!」

そう言ってくれたのはヒマリ。

「そうだよねー。やっぱそうだよねー。」

私は、急いでケーキ屋に電話をかけた。

「大変申し訳ございません。」電話の向こうでは、まだザワザワ・・・ケーキ屋は激混みだった。

「今から行きますんで。」得も言わせず電話を切り・・・

「ハイ。ママ、コレコレ!!」ヒマリはそういって背伸びをしてマフラーをかけてくれた。

「ヒマも行く。」

「ほんと?・・・ヒマぁ・・ありがとう」

こうして私はヒマリを自転車に乗せて

夜の街を駆け抜けた。

「ケーキ・ケーキ・・・」

自転車の前カゴにケーキの箱をすっぽり入れて

自転車をこいでいる間もケーキを見守っていた。

「えーーー。ヒマぁ・・・大丈夫ぅ・・・?」

ヒマリのとって久々の電車。

夜の街にヒマリとこうして電車に揺られてる。

「もうすぐ着くからね。」

そうして、ケーキ屋まで私は緊張感いっぱいで向かっていた。

午後7時を回るころ

店の外でその人は待っていた

グレイのダッフルコートに

メガネの男

「あー・・・さっきは本当にスミマセン・・・」

ケーキ屋のお姉さんも一緒だった。

「あの・・・コレ・・・」

「こちらの方がさっきから待っていてくれて・・・」

どうやら、私たちのケーキは

店員の渡し間違えだった。

「ハイ。どうぞ。」

メガネの男はそういうと

私とヒマリの前に

クリスマスケーキが入った箱を差し出した。

「うわ~。良かったぁ。」

ヒマリは砂糖で、できたサンタが大好きでそれを見ると大喜び。

私は慌てて・・・

「これ。息子さん?の誕生日ですよね。今日・・・」

「ハイ・・・どうしても、待ってるんで。」

「あぁ・・・良かったですぅ・・・」

こうして、ケーキは無事交換され

私とヒマリは帰りの電車に揺られていた

「ママ・・・良かったね。届けて。」

「うん。ヒマ・・・あんたもえらいよ。」

「だって、ゆうくんって書いてあったし。」

娘はゆうくんって名前に

「おともだち・・・って。」

大切な誕生日だから

きっとケーキを届けたくなったんだね。

「ありがとう。ヒマリ。」

私は、ヒマリの優しさに

また胸が熱くなった。

「ママ・・・・起きて・・・」

危うく、乗り過ごすかと思った・・・

「帰ってからケーキ食べよ」

「うん」

こうしてヒマリとのクリスマスはドタバタだったけど

なんだかすっごく、いいことしたなって。

でも、その後・・・また再会しちゃうなんて・・・

私のドキドキはまだ終わらなかったんです。
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