好きです…
手を引かれて入った喫茶店。

「いらっしゃい」

「マスター、いつものと…君、何がいい?オレはカプチーノなんだけどさ」

「カプチーノ…」

「あっ、女の子みたいとか思っただろ」

「いえ、そんなことないです。あっ…えっと…私もカプチーノで。」


「なんだ、梗太くん、彼女いたんだね〜。」


「違いますよ〜。保護したんです!」

「保護?まっ、ゆっくりしていってね。お嬢さんも!」


「あっありがとうございます…」


「ここ、好きなんだ、オレ。静かだし、マスターもいい人だし。」


「そうですね。雰囲気がいいですね…」


時間がゆっくり流れる感じがする…


「あっ…え〜っと…梗太さん…」


「ん?あっそっか、さっきマスターが名前言ってたからね」


「はい…それで…」


「君、名前は?あっオレはさっきも聞いたと思うけど梗太。安田梗太。歳はね、26歳で公務員してるんだ。すぐそこの区役所」

26歳…若くみえるなぁ。声のせいかなぁ。


「私は…田中梓です。18歳です…」


「梗太くん…保護じゃなくてナンパして来たんじゃないのかい?」


「マスター…だから違うってば。仕事柄放っておくわけにいかなかたんっすよ〜」


そうだよね…ただの親切心なんだよね。しかも仕事柄ね、黙って見過ごせなかったんだよね…

って私、何をがっかりしてるんだろう…

「はい、梓ちゃん。どうぞ」

「ありがとうございます…」


「で…続きをどうぞ」


「あっ…そうでした…すみません。それで、大学に通うために上京したのですが、極度の方向音痴で…アパートがわからなくなって…ずっと歩き回っていたんです…携帯も実家に忘れてきてしまったようでして…」

あ〜、笑われるよ…呆れてるよね…


「心細かったね。梓ちゃん。もう、大丈夫だよ。アパートの住所わかる?名前だけでもいいんだよ。ちゃんと送ってあげるからね。」

なんなの、この人!!いい人すぎるよ…

彼を思い出す…
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