クリスマス・マジック―奇跡の夜に―
だって、彼は……




「ところで君は誰?」


遠慮がちに私の目を見ながら、素敵な彼は私へと問いかける。


「あなたこそ、誰?」


私も彼に問いかける。


そう、私達はたった今出会ったばかり。


偶然と偶然が重なって起こった出会い。


名前なんて知らない。ましてや何をしている人かも。もちろん年齢も。


彼のことはただ1つしか知らない。


彼も私のことは1つしか知らない。


互いに目を合わせ、フッと口角を上げながら微笑んだ。










「こんな日に振られた寂しい人 だ 」
「こんな日に振られた寂しい人 よ 」











2人の声は心地よく重なる。


言葉とは裏腹に、今は寂しさを感じてはいない。


きっと、彼の存在がそうしてくれる。


私は彼氏との待ち合わせ中に、電話で彼氏に振られた。電話の向こうから私じゃない別の女の子の声がしていた。


「「別れよう」」


なぜか別れの言葉が二重で聞こえ、驚いて振り向くとそこに居たのが彼だった。


私と同じように振り向いた彼と、目が合い、そしてその瞳に吸い込まれるように、いつまでも見詰め合っていた。


気づいたときには電話は切れてしまっていた。
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