イチゴ大福

俺は静かにせいじさんの帰りを待つ。


戻ってくる確証は無い。

けどきっと、戻ってくる。

「いってくらぁ!」

そう言ったから。



「もう8時か…」

せいじさんが出ていって4時間がたつ。

戻ってこないかも。

そんな不安もあった。
けど、俺は信じるよ。

きっと、俺に結果を説明してくれるってー…




「やす!いるかぁー?」

せいじさんの声がした。

戻ってきてくれた、、!

それが一番嬉しかった。

「せいじさん!」

俺はせいじさんに返事をした。

「やす!ありがとな!」

そう言って笑ってくれたせいじさん。

「…会えましたか?」

俺は聞いていいのか悩みながらもそう聞いた。

「…いや、会えなかった。
かーちゃんにさ、子供がいたんだよ。
再婚相手との子供。
多分、中学生くらいなんだろうな。
可愛い娘だったよ。
そんな娘と一緒にいるかーちゃんに、声なんてかけられなかった…」

そう言って視線を落としたせいじさん。

そうだよな。

この世界に足を突っ込んだんだ。

関わればその分、危険が増える事なんて、容易に想像できる。

それを考えると、その娘とは関わらない方がいい。

それなら間接的に、母親とも関われない。

せいじさんは、その娘と母親のその後の将来をちゃんと考えたんだな…

「せいじさん…」

俺がせいじさんに声をかけようと、名前を呼んだ時…

「俺さ、会いに行ってよかったって思ったんだよ。
うじうじ悩んでるのは嫌いだからな!
ありがとな!やす!!」

そう言って笑った。

それは俺が言うことだよ…

でも、それは言葉か詰まって言えなかった。



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