濃いラブコメ
初めてこの趣味に目覚めたのは、小学校六年生の頃だ。家で戯れに、姉のスカートをはいてみたことがあった。へらへら笑いながら、鏡に映る自分の姿を見た。
絶句した。
似合っていたのだ。
鏡の中に、ショートカットの美少女がいると、自分の姿なのに錯覚してしまった。つい、見とれてしまっていた。
しばらくしてから、我に返った。同時に、これはいけないことだという意識を感じて、恥ずかしくなった。だが、その恥ずかしさがなんだか気持ちよかった。ねっとりと熱く、甘い快感を覚えた。
幼い頃から、ぼくはまじめに生きてきた。
両親の言うことを素直に聞き、勉強も運動もしっかりとこなしてきた。そのことに、不満を感じたことはなかった。まじめに生きることが、固くてつまらないとは思わない。まじめには、まじめなりの楽しさ、面白さってものがある。
ただ、自分がこれをやりたくてやったという経験があまりなかった。なんとなく、流されて生きてきた部分があった。それが、少しむなしかった。
そのむなしさが、姉のスカートをはいた瞬間に吹っ飛んだ。
ぼくがやりたいことは、これだと思った。
バカにしたければバカにすればいい。そのとき確かに、ぼくは生きる喜びを感じたんだ。