濃いラブコメ
着た。
もう、がまんができなかった。
ぼくはメイド服を受けとると、衝立に隠れて、猛烈な勢いで着替えた。ブラウスとスカートを身につけ、カチューシャを頭にのせる。
素晴らしい着心地だった。やはり生地には高級品が使われており、肌触りがちがう。それに動きやすい。まさに家政婦のために作られた本格派なメイド服だ。着ているだけで、思わず背筋がのびた。誰でもいいから片っ端からご奉仕したい!という衝動に襲われ、体が震えた。
「・・・・・・かわいいわね」
色摩さんが、少しおもしろくなさそうにつぶやいた。
校長も、目を丸くしながらぼくを見つめている。
ああ!見られている!女装したいけないぼくの姿をひとに見られている!生徒会長と校長先生に見られている!
ぼくは、ハアハアと荒く呼吸をしながら、部屋の中を見回した。
「何探してるの?」
色摩さんが、聞いた。
「鏡は!?鏡はないんですか!?」
「・・・・・・ないけど」
「何でだよっ!?」
ぼくはキレた。
鏡がなければ、ぼくのメイド服姿が見られないではないか!あの色摩さんがかわいいと認め、校長が見とれたこのぼくの姿がどのようなものなのか?どれほどかわいいのか?美しいのか?ああっ!確認したい!早く確認したい!トイレに行くか!?いや、さすがにそれはまずいか。他の生徒に見られる。
・・・・・・それもいいかも。
いやいやいやいや、ダメだダメだダメだ。
落ち着け、ぼく。
たもて理性。