濃いラブコメ
あ、間違えた。これは、ぼくだ。あまりにも神々しいメイド服姿だったので、うっかり天使と間違えてしまったようだ。
しかし、素晴らしい。なんて素晴らしいのだろう。ぼくは自分の神レベルでの女装の才能に、恐怖すら覚えた。
何が神レベルかって、写真には、巴投げをされたあとの倒れたぼくが写っているのだが、その倒れ方も、本物の西洋のメイドが、もしも巴投げで投げられたら、こう倒れるであろうと予想される姿勢を(?)忠実に再現しているのだ。肉体が、無意識で、それを行っていたのである。
他の女装者に、このような芸当がはたしてできるであろうか?否、できまい!
ぼくの体は、もはや本能のレベルで女装に向いているのだ。
「・・・・・・色摩さん!」
「何?」
「このケータイください!」
「ふざけんなバカ。写真なら、あとでメールに添付して送ってあげるから。ほら、返しなさい」
「絶対ですよ!?絶対ですよ!?」
何度も念を押しながら、ぼくはケータイを色摩さんに返した。
色摩さんは、ケータイをポケットにしまうと、椅子(校長)に座り直して、ぼくをまじまじと見た。
「・・・・・・むかつくけど、確かにあんたかわいいわ。それは認める」
「当然です。ぼくは女装の天才ですから」
ぼくは胸をはった。
「ふーん。まあ、これなら大丈夫かな?・・・・・・実は、そんな女装の天才のあなたにね、ひとつ頼みたいことがあるんだけど」
色摩さんの目に妖しい光が宿った。ぼくは再び警戒心を抱いた。
「・・・・・・今度は何ですか?」
「なーに、ちょっとしたイタズラをね、手伝ってもらいたいのよ。あなたにしかできない・・・・・・ね」
色摩さんは、ゆっくりと笑みを浮かべた。