濃いラブコメ
「大丈夫か?」
おれは少女にゆっくりと手をさしのべた。
少女はその手をつかまずに、自分で立ち上がった。
ゴスロリ、というのだろうか。その少女は、西洋人形のような、フリルのたくさんついた黒いドレスを身に着けていた。年齢は、おそらくおれと同じくらいだろう。少し化粧が濃いが、大きな目をしていて可愛らしい。
少女は、こちらと目をあわさないよう、うつむきながら、ごめんなさいとつぶやくと、背を向けて走り去っていった。
怖がらせてしまったかもしれない。
おれはでかくてごついから、子供に話しかけると、怯えられることが多い。
それにしても、あの少女、どこかで会ったことがあるような気がした。しかしゴスロリなんて、実際に目の前で見るのは生まれて初めてだ。何かの間違いだろう。