濃いラブコメ


登校し、玄関の靴箱を開けると、三枚のファンシーな柄の封筒が入っていた。


ああ、またラブレターだ。


おれはため息をついた。


ギャルゲー病になってから、本当にモテるようになった。
まるで人気アイドルのCD予約受付のように、女の子からの告白が相次いだ。おれはそれを片っ端から、ひとりひとり真剣に断っていった。


おれには、好きなひとがいるのである。


そのことを話して、告白してくれた娘には、頭をさげてあやまった。ラブレターをくれた娘にも、こちらから断りに行った。


辛い行為だった。


目の前で泣かれたりする。時々、理不尽に怒鳴られたりすることもあるし、殴られることもある。おれは、それを、黙って受け止める。彼女達も、ある意味おれの病気の被害者みたいなものだ。こんな病気にさえかかっていなければ、おれなんかにラブレターを出すことなどなかっただろうに。


まったく嫌な病気だ。


そんな日々をくりかえすうちに、金屋武には好きなひとがいる、という噂が校内に広まった。告白してくる娘はいなくなったが、それでも、まだ時々こうしてラブレターをもらったりする。


昼休みに、断りに行かないとな。


憂鬱な気分で、ラブレターをポケットに入れた。



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