楓 〜ひとつの恋の話〜【短】
「こんばんは」
鐘の音と、冬の匂いを孕んだ風。
それらと一緒に店内に入って来たのは、柔らかい雰囲気の女性。
「いらっしゃいませ」
さっきのように『空いてるお席へどうぞ』と続けないのは、笑顔で会釈をした彼女の着くテーブルには先客がいるから…。
「ごめんね、待った?」
「ちっとも」
男性は愛おしげに微笑み、女性もまたフワリと笑みを零す。
彼らは週に三回、20時にこの店で待ち合わせをしている。
一昨年のクリスマスイヴの夜にここで出会ったという二人は、お互いに惹かれ合っていったのだろう。
私がおじいちゃんの手伝いをするようになった1年程前には、既に彼らは恋人同士だった。
平日の夜のデートでは、ずっとここを待ち合わせ場所にしているらしい。
大体は男性が先に来て、後からやって来た女性とコーヒーを飲みながら話していく時もあるし、彼女が来てすぐに二人仲良く立ち去る時もある。
何にせよ、彼らを見ていると、私は元より他の誰も入り込む隙が無い程に相思相愛だとわかるのだ。
鐘の音と、冬の匂いを孕んだ風。
それらと一緒に店内に入って来たのは、柔らかい雰囲気の女性。
「いらっしゃいませ」
さっきのように『空いてるお席へどうぞ』と続けないのは、笑顔で会釈をした彼女の着くテーブルには先客がいるから…。
「ごめんね、待った?」
「ちっとも」
男性は愛おしげに微笑み、女性もまたフワリと笑みを零す。
彼らは週に三回、20時にこの店で待ち合わせをしている。
一昨年のクリスマスイヴの夜にここで出会ったという二人は、お互いに惹かれ合っていったのだろう。
私がおじいちゃんの手伝いをするようになった1年程前には、既に彼らは恋人同士だった。
平日の夜のデートでは、ずっとここを待ち合わせ場所にしているらしい。
大体は男性が先に来て、後からやって来た女性とコーヒーを飲みながら話していく時もあるし、彼女が来てすぐに二人仲良く立ち去る時もある。
何にせよ、彼らを見ていると、私は元より他の誰も入り込む隙が無い程に相思相愛だとわかるのだ。