楓 〜ひとつの恋の話〜【短】
「行ってらっしゃい」
背中に優しい声を受けながら、商店街から一本中に入った路地にあるおじいちゃんの喫茶店を飛び出した。
人通りの少ない路地から賑やかな商店街を抜け、辺りをキョロキョロと見渡す。
あの二人がいつも帰る方向に走って来たけど、彼らがどこに住んでいるのかなんて知らないし、商店街を抜けてしまって良かったのかどうかもわからない。
まだそんなに遠くには行っていないはずだけど、二人の姿が見当たらない事を考えれば方向が間違っているのか、商店街の途中にある路地を曲がったのか…。
もしかしたら、今日はいつもとは反対の方向に行ったのかもしれない。
息の切れた体は大袈裟なくらい上下し、酸欠になりそうな頭ではどうするべきかの判断を下せない。
これで良かったのかもしれない……
おじいちゃんはあんな風に言ってくれたけど、もうすぐ結婚する男性に気持ちを伝えて、何がどうなるというのだろう。
冷静さを取り戻し、前髪をクシャッと掻き上げた時…
「楓ちゃん?」
柔らかい声音が、背後から届いた。
背中に優しい声を受けながら、商店街から一本中に入った路地にあるおじいちゃんの喫茶店を飛び出した。
人通りの少ない路地から賑やかな商店街を抜け、辺りをキョロキョロと見渡す。
あの二人がいつも帰る方向に走って来たけど、彼らがどこに住んでいるのかなんて知らないし、商店街を抜けてしまって良かったのかどうかもわからない。
まだそんなに遠くには行っていないはずだけど、二人の姿が見当たらない事を考えれば方向が間違っているのか、商店街の途中にある路地を曲がったのか…。
もしかしたら、今日はいつもとは反対の方向に行ったのかもしれない。
息の切れた体は大袈裟なくらい上下し、酸欠になりそうな頭ではどうするべきかの判断を下せない。
これで良かったのかもしれない……
おじいちゃんはあんな風に言ってくれたけど、もうすぐ結婚する男性に気持ちを伝えて、何がどうなるというのだろう。
冷静さを取り戻し、前髪をクシャッと掻き上げた時…
「楓ちゃん?」
柔らかい声音が、背後から届いた。