smile

「私の親ね、凄く仲が悪いんだ…」

「え」


「私が小学生になったあたりからかな、夫婦喧嘩が絶えなくなって、この町に来るまで離婚と再婚を繰り返してきたの。お父さんが転勤が多い仕事をしているから、再婚の度にお母さんと二人で引っ越しをしてて、なんて言うのかな…親に振り回されて生きてきたの」

「……。」


「それでも去年くらいまでは何事もなく3人で生活してたんだけど、最近また喧嘩が始まったみたいでね、この間家に帰ったら……割れたお皿とか写真たてがいっぱい落ちてて、たぶん離婚になるんだと思う。」


「えっ」


「こんなんだからさ、親たちは自分たちのことで精一杯で、家族の思い出とかなくて。しかもそんな暗い家に帰りたくなくて、ソフトを始めたんだよね。あ、でも今はソフト家のことを抜きにしてもソフトは好きだよ!(笑)

んで、当然家族の思い出てかもないからさ、拓海君に出会って、こうして遊んで…本当にありがたく思ってる。友達になってくれて、ありがとう」



その言葉は、笑顔で俺に伝えられた。

だけど、その笑顔はいつもの底抜けに明るい笑顔ではなく、寂しさをはらんでいたことは、俺でも簡単にわかった。



海と出会ってから全く想像もできなかった事実に、俺は心が痛くて、何も言えなかった。



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