それは気持ち次第
それは気持ち次第
ロボ。

そういった渾名を付けられる気分は如何なものなのだろうか。

かたかたとキーボードを無表情で打ち付ける横顔をちらりと覗いてみると、気付いているはずなのに彼は少しも視線をこちらに向けようとはしない。

かたかたと規則正しく動く指を凝視しても同じ。向かう先はパソコン画面だけ。

割りと整った顔立ちだというのに、女子社員の人気は皆無。彼が女の子に話し掛けられているのを見たことなんてない。

理由は、ロボみたいだから。

そう女子社員が噂していることだって知っているだろうに、そんなことも華麗にスルーしている。それは見事だと思う。

だってそれは、「感情がない」と言われているようなことなのだから。

「……手を止めてたら、発注間に合わないですよ」

眺め続けて数分。

いい加減痺れを切らしたらしい彼──小野田君にさらりと言われた。

「はい」

私はその言葉に前に向き直り、パソコン画面と睨めっこをした。

とはいえ、私の集中力は非常に脆く、長い間その姿勢を続けることは出来ない。でも、きちんと仕事は仕事でこなす。その短い集中時間でいかに効率よく仕事を上げるか。それがもう私の特技だ。



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