それは気持ち次第
クリスマス間近。
世間では浮かれムードが漂っているが、私達百貨店勤務にとってはクリスマス商戦と呼ばれるくらい、忙しい。一年の何割かの売上がこの時期に集中するのだ。

商品が足りなくなればそのぶん売上を逃すことになる。なのでこの時期の私達は発注の計算で大忙しだ。

担当するのは雑貨のフロアー。確かに宝石などと較べれば売上は少ないほうであるが、それでも他の時期の何倍もある。

「ねぇ、小野田君」

私は缶のミルクティーを口にしてから彼の名前を呼んだ。

「何ですか」

小野田君はパソコン画面から目を離さずに返してくる。一応私のほうが先輩だというに、彼は律儀に手を止めてこちらを見るような真似は決してしない。

オフィス内にはかたかたと様々なペースのキーボードを叩く音が響くし、ファックスの音、コピー機の音、それらも混じる。

「君はクリスマスに彼女に何をプレゼントしたい?」

取り敢えずこの時間までには終わっていなくてはならない作業を終え、尋ねた。別に小野田君がパソコン画面に向かいっぱなしなのは彼の作業効率が悪いせいではない。むしろ、早い。

彼は他の人の終わっていない仕事まで引き受けているのでそんな状態なのだ。

「何ですか、その意識調査。……あ、先輩、担当でしたね」

小野田君は平坦な口調で言う。平淡、ではなく、平坦。真っ平ら。起伏の山なんて微塵もない。

そう、まるでロボットが喋っているのかのよう。

「そうなんです」

私は言ってからまた、ミルクティーを一口飲んだ。



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