それは気持ち次第
ロボ、と渾名を付けられているわりに小野田君はよく喋るほうだ。無論、自分からぺらぺらと喋ったりはしないが、こうして話し掛ければ返してくれる。

席が隣になったよしみで、というか私は彼が入社してきたときから時折こうして話し掛けている。話し掛けるというより、若干絡んでいるように見えなくもない。

「クリスマスだからって、恋人と一緒にいなきゃいけないなんて、そんな法律有りませんし」

小野田君はやはり平坦な口調で言う。

どうしたんだ、小野田君。と心の中で呟いてみる。彼から会話の発端を作るなんて本当に珍しいことで、私は心から驚いた。

「だって、クリスマスって、イエス・キリストの誕生日ですよね?その日に恋人と過ごすって、無意味じゃないですか?例えキリスト教だとしても、それはおかしいです」

うん、言いたいことはよくわかります。と、心の中で返事をする。

珍しくいつも以上の饒舌で、珍しく仕事の手を止めている小野田君は何だか面白い。

「それはね、昔、何処かの雑誌が提案したからじゃなかったかな」

私は口許を緩めながら返す。何だこれ。凄く面白い。

「それは確かな情報ですか?」

「どうかな。イヴのこととごっちゃになってるかもしれない」

「不確かな情報を与えるのはやめて下さい」

「はい、すみません」

小野田君はきっちりとした性格、というと少し違うが、曖昧なことがあまり好きではない。何時くらい、というのも好きではない彼に時間を告げるときは、何時で、と言わないと「過ぎてもいいんですか?何分までならオーケーですか」と返ってくる。

でもこれは嫌味ではなく、彼なりの確認だと気付いたとき、私は吹き出していた。

そう、面白いから絡むのだ。




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