妄想クリスマス
それは夢か現実か

寒さの訪れと同時に始まる煌やかな色とりどりのイルミネーション。

ビルの残業の明かりじゃないその眩しさにも慣れた頃。

その日は訪れる。





「綺麗…」





ここは某ホテルのスイートルーム。

このホテルを利用するんだってそうそうあることじゃないのに。

彼はわざわざこの日に予約をいれてくれた。

指の跡ひとつない大きなガラスの向こうに広がるのは。

紺色の中に散りばめられた宝石みたいな光。

いくら見ていても飽きなくて。

吸い込まれそうな景色に魅せられていた。





ふいにガラスに映り込んだ彼は。

後ろから私を包み込むように抱き寄せる。





「先輩から夜景がきれいだって聞いてさ。
お前に見せてやりたかったんだ」

「…ありがとう。嬉しい…」





後ろからまわされた腕に、私は頭を預ける。

背中から感じる彼の温もりが心地よくて。

瞼を閉じた。



< 1 / 11 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop