妄想クリスマス
それは夢か現実か
寒さの訪れと同時に始まる煌やかな色とりどりのイルミネーション。
ビルの残業の明かりじゃないその眩しさにも慣れた頃。
その日は訪れる。
「綺麗…」
ここは某ホテルのスイートルーム。
このホテルを利用するんだってそうそうあることじゃないのに。
彼はわざわざこの日に予約をいれてくれた。
指の跡ひとつない大きなガラスの向こうに広がるのは。
紺色の中に散りばめられた宝石みたいな光。
いくら見ていても飽きなくて。
吸い込まれそうな景色に魅せられていた。
ふいにガラスに映り込んだ彼は。
後ろから私を包み込むように抱き寄せる。
「先輩から夜景がきれいだって聞いてさ。
お前に見せてやりたかったんだ」
「…ありがとう。嬉しい…」
後ろからまわされた腕に、私は頭を預ける。
背中から感じる彼の温もりが心地よくて。
瞼を閉じた。
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