妄想クリスマス
「…話が、あるんだ」
首元を擽る彼の吐息がくすぐったい。
身を捩り彼と顔を合わせようとすると。
彼は「そのままで聞いて」と。
腕に力を込めた。
つきあって3年。
お互いの仕事の都合ですれ違いも多いけど。
何となくうまくやってきた。
私自身、それをそんなに意識したことはないけれど。
この流れ、このシチュエーション。
ひょっとして、ひょっとして…。
「…け「3番Aコース2つ入りましたーっ!!」
「6番Bコース上がりました!!」
「次、12番上がるよ!!」
厨房に響くバイトのウエイターの声。
それに返事をするキッチンの声。
交ざり合う声に我に返った。
「チーフ!!忙しいんすからトリップしてないでくださいよ!!」
隣でフライパンを振る後輩がイライラ気味に声を荒げた。
…そうだった。
ここは夜景の綺麗なホテルのスイートルームなんかじゃない。
今現在戦場と化している、私の職場だ。