Noisy Christmas

同じようにここまで歩いてきたはずなのに国澤の手はとてもあったかい。
男と女では体温調整が違うのだろうか。

自分のすっかり冷え切った手に思考の鈍った脳内がそんなことを思う。
握られた手もそのままに国澤の顔を見ると、私を見つめる眼差しがやけに熱い。

えーっと。
なんだろう、この雰囲気は。
ピンク色に感じるのは、気のせい?

なんとなく目を逸らすことができずにいると、国澤との顔の距離が近くなって来た。

「楢崎、俺は――――」

普段では絶対にありえない国澤とのこのシチュエーションに戸惑っていると、物凄い気迫を放った人物の気配が迫ってきた。

「ああーっ! 咲子さん、浮気現場発見!」

何処から沸いて出たのか矢野が猛ダッシュで近づいてきて、私の手を握る国澤の手を体ごと引き離す。

「国澤先輩。咲子さんに触らないでくださいよっ」

ふくれっ面をした矢野が子供のような顔で国澤をにらみつけている。

「え? 矢野? なんで?」

突然現れた矢野に私は目が点になる。
わけがわからず矢野を見ると、上司である国澤をキッと睨みつけて動かない。
国澤も国澤で、矢野のその態度を受けてたつ、とでもいうように睨み付ける目を見返している。

ええっと。
急に現れたかと思ったら、一体なんなのこの状況。

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