Noisy Christmas
「お前、とうとう頭がおかしくなっただろ?」
僅かに間を置いたあと、国澤が嘲笑を浮かべて矢野を見る。
「おかしいってなんですか。失礼な。いくら国澤さんでもその発言赦せません」
矢野が憤慨する。
「咲子さん。僕の封筒を国澤さんに渡してください。今ここでっ!」
「えっ? いや、でもそれは。ほら、もっとみんな落着いて冷静になっている時の方が。ね」
私は退職届を出せといわれて慌ててしまう。
今出したら矢野の退職が決定になってしまいかねない。
それでは私の責任が重大すぎるじゃないの。
「なんだよ封筒って」
できれば先送りにしたいのに国澤が絡んできてしまった。
私は思わずポケットの上を手で押さえ、なんでもないというように首を横に振る。
すると、矢野がそのしぐさを見逃さずに、そこにあるんですね。なんてポケットを指さす始末。
その言葉を受けた国澤が、出しやがれ。人のポケットに手を突っ込んできた。
「ちょっと国澤。勝手に人のもの、あっ……」
男の力に敵うはずもなく、ポケットに収まっていた退職届は難なく国澤の手に渡ってしまった。
「本当に封も切ってないんですね……。僕、泣けてきました」
国澤の手にある封筒を見てしくしくと泣きまねをして見せる矢野に、ごめん。と落ち込む私。
だって、退職届なんて、私には荷が重過ぎるよ。
けれど矢野は、責任を取れっていったじゃないですか。と益々グスグズ。
そんな矢野に困った顔をしていると、国澤が一つも躊躇うことなくビリビリと封を切った。
「あっ!!」
ちょっと勝手に。と思う間もなく国澤によって中身が晒されてまった。