Noisy Christmas
本人そっちのけで熱くなっている二人を見ていたら、なんだか段々冷めてきたというかバカらしくなってきたというか。
そもそも、今日ってクリスマスなのに矢野が退職届かと勘違いさせるような発言して手紙なんか書いてよこすから、すっかりそれどころじゃなかったわよ。
いつまでも言い合いの続く二人を一瞥して、私は自宅ドアの鍵を開けて一人帰宅。
「あー、疲れた」
冷蔵庫から缶ビールを取り出し、メリークリスマスとささやかに言ってみる。
外では矢野と国澤の言い合いが続いているようだけれど、きっとそのうち疲れてやめるだろう。
そしたら三人でクリスマスパーティーでもいいかな。
カチリと小さなツリーのスイッチを入れれば、チカチカと赤と緑が瞬きだした。
窓の外からは近所迷惑な声がまだ聞こえてきている。
「僕の方が咲子さんのことを愛してますっ」
「うるせぇっ。俺の方が何倍も楢崎のことをわかってやってるんだよ」
「なんですか、そのわかってやってる、なんて傲慢な言い方は。愛は対等なんですよ」
「何が対等だ。しょんべんくさいガキに愛の何が解る。だいたい、家にまで押しかけてくるなんて百万年早いんだよ」
「自分だってのこのことやって来てるじゃないですか」
いつまで続くんだろう? と私は窓を開け二人の言いあいをビールを飲みつつ眺める。
白熱のバトルもそろそろ止めたほうがいいかしら?
あったかな部屋の中から私は外の二人に声をかけた。
「ねぇ」
私の声にピタリと言いあいをやめた二人が同時にこっちを見る。
その顔たちに向かって陽気に声をかけてみた。
「メリークリスマース」
笑顔で缶ビールを掲げると顔を見合わせた二人が同時に声をあげた。
「他人事ーっ?!」
鈴の音もかき消すような二人の突っ込みに私は声を上げて笑った――――。