Noisy Christmas
「気に入られてんじゃん」
逃げ去った矢野の背中を睨んでいると国澤が面白がっている。
「好かれるのは悪くないけどね」
「悪くないのか……。満更でもなさそうだもんな」
「そう?」
僅かに嫌味臭い言い方の国澤に、じゃあね、と手を上げると引き止められた。
「なぁ」
「ん?」
「その……。週明けって、空いてるか?」
「週明け? ん~。どうだろう? 忘年会の時季だしね。なんで?」
「あ、うん。いや、まぁあれだよ。あれ」
「あれ?」
はっきりしない国澤に自然と眉間に皺が寄る。
「なに?」
国澤は訝しむ私となかなか目を合わせようとしない。
「楢崎は、そのー。今一人身だよな?」
「なに、それ? 嫌味?」
彼氏がいなくて悪かったわね。と私は腕を組んであごを上げる。
「いや、別に喧嘩を売ってるわけじゃないんだ。悪かった。とりあえず週明け、空けといてくれると助かる」
「相談事でもあるの?」
「ん? まぁ、そんなところ」
「了解。仕方ないからじっくり聞いてあげるわよ」
同期の誼でね、なんて思いながら片手を上げる国澤のフロアへ戻って行く背中を見送った。