猫と宝石トリロジー ②エメラルドの絆
「くっ」
自分からした事とはいえ、唇を離すとキスの続きを求めるような潤んだ瞳や、薄く開いたままの柔らかな唇に理性を掻き集めなければならなくなって蓮は小声で悪態をついた。
「さあ、横になるんだ」
一花は首を振る。
眠るなんて、無理。
黒猫のことを考えずにはいられない。
「身近な人だった」
「今日はやめろ」
「信じてきた仲間の誰かが……」
それは誰?
あんなに褒めてくれたカメラマンさん?
麻未に盗られたドレスは絶対に私の方が似合うって言ってくれたスタイリストさん?
まさか、マッキー?ジェニー?
ううん、
違う、絶対に違う!
誰のことも疑いたくない
一花はワッと泣き出しそうになって顔を両手で覆った。
「まだそうと決まった訳じゃない」
蓮はベッドに上がって彼女を抱きよせた。
彼女を苦しめる奴が許せない。
こんな風に彼女を苦しめる奴は必ず俺が報いを受けさせる。
「もし身近な人物だったとしても、そいつは病んでるんだ」
「誰も疑いたくないです」
「ああ。それは俺に任せればいい」
「私の友達を疑ってる?」
「こんな事をするやつは友達じゃない」
「……そうですね」
彼の言うことが正しい。
でも顔が思い浮かぶ人の誰かがそうだったらと思うと、一花の胸は悲しみで潰れそうになった。
「一花、君の信じている人達は大丈夫だ」
「どうしてそんな事がわかるの?」
「俺が君を信じてるからだ」
彼の口元がふっと綻んだ。
「何ですか、その俺様な理屈」
小さく笑って、もう!と胸を叩くと、ぽんぽんと優しく頭を撫でられた。