猫と宝石トリロジー ②エメラルドの絆
彼女が自ら唇を重ねてきた瞬間、掻き集めた蓮の理性が音を立てて崩れだした。
「やめるんだ」
言葉とは裏腹に、蓮の心と身体がこのまま一花を自分のものにしなければ、息をすることもできないだろうと責め立てている。
それでも蓮は培ってきた精神力を総動員して理性の綱にすがり付いた。
「あんな事があって混乱しているんだ」
一花は拒否されて傷つくはずなのに、感動した。
大切にしようとしてくれる気持ちに胸が熱くなる。
「そうかも知れないです」
「俺は弱味につけこむような真似はしたくないんだ」
ああ、ほらね。
私自身が求めずにはいられない
「私が弱味につけこめばいいんですね」
一花は彼から離れると、膝立ちになって部屋着を頭から脱ぎ捨てた。
部屋着の下は今朝出掛けた時のままだった。
ショーの時は裏で大勢の人前で着替えるので脱ぐことは慣れているはずなのに、今は顔から火が出そうだ。
蓮は低く呻いて、警告の眼差しを向けた。
「一花」
「せっかく着せてもらったのにごめんなさい」
軽口を叩いているが、胸はドキドキと高鳴っていて、きっと彼にも伝わっているはずだ。
「私を独占して下さい」
震える手を彼に伸ばした。
「後悔しても知らないぞ」
「後悔なんてしません、このまま朝を迎えない限りは」
ぐいっと手が引かれて唇が触れる寸前で熱く見つめられる。
「一花」
名前を呼ばれただけなのにゾクッと身体が反応する。
「止めてと言うなら今だ」
額と額をくっつけて彼は苦しそうな顔をした。
一花は迷わず告げた。
「抱いて」